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柴田 裕

vol.80


PROFILE

キーコーヒー株式会社
代表取締役社長

現在の会社での経歴と担当している主な活動

1987年、当時父親が社長を務めていたキーコーヒーに入社。その後1994年に慶應ビジネススクールに学び、MBAを取得する。その後取締役として営業部長や企画本部長を歴任。2001年に専務取締役に就任し、主に環境問題や品質保証部門を管掌する。2002年7月に38歳で代表取締役社長となり、現在に至る。キーコーヒーはインドネシアでのトラジャ事業(理想のコーヒーを追求し、ゼロからつくったコーヒー事業)で、生産農家の生活水準向上を含めた地域一体型の開発を行い、事業を開始して30年来、住民等との協力体制を確立している。社長就任後も、こうした生産国に足を運ぶなど、現場でのコミュニケーションに努めている。

趣味

ふたりの息子のピアノの練習をみてやること。

好きな国or行ってみたい国

スペイン。ビジネススクールの交換留学で訪れた思い出の地でもあり、今を楽しく幸せに生きようとする人々のエネルギーを感じられるところが気に入っている。

影響を受けた人、尊敬する人、目標にする人

慶應ビジネススクールで知り合った友人たちとは、現在も親しくしており、刺激を与えてもらっている。

一番大事にしているもの

家族との時間


柴田さんが描く、理想的な社会とはどんな社会ですか?

それぞれの国や地域、個人の価値観を軽んじることなく、多様性を尊重できる社会です。何をもって幸福に感じるかは千差万別でいいと思うのです。ある価値観をもとに定義した幸福感に沿って、政策として均質化の実現をはかるのは、正しいことだと思いません。経済大国と言われている日本と比較すればインフラの整っていない国は多いですが、それらの国の人たちが日本人より不幸なのかというと、必ずしもそうではない。先進国が途上国を支援するケースでは、便利になることが幸せにつながっているのか、見誤らないよう慎重になる必要があるでしょう。

国内でも、近年「格差」が問題になっていますね。しかし、私はこの「格差」という表現が好きではありません。私がそのように言うと、「東京で社長をやっているからそんなことを言えるんだ」と返されてしまうこともありますが、何でも「格差」と言って、上下の構図に当てはめてしまうことに違和感を覚えるのです。もしも、都会のお金持ちが一番だというのが日本人の価値観を代表しているのだとすると残念に思います。

どうすれば、この理想的な社会を築いていけると思いますか?

社会人を含めて、教育が重要だと思うのですが、教育の持つ意味合いが日本では少し画一的に思えて気になります。世界を見渡すための視野を育てることを狙いにしたカリキュラムの充実も重要だと思いますし、幸福感の公約数のようなものをさまざまな歴史や社会の中で学び取ろうとする試みも良いかもしれません。

私はコーヒー会社の人間ですから、みんながゆっくりと、味わいながらコーヒーを楽しめるようなひと時が、ひとつの幸福の表れだと思っています。

今の仕事をしていく上での喜びと、逆に難しい点は?

当社が30年間、生産者と一緒に育ててきたプレミアムコーヒー、トアルコ トラジャの直営農場は、インドネシア・スラウェシ島の山岳地帯にあります。山奥にあって日本から2日もかかってしまうような不便な場所ですが、生産者や地域を知ることは大事なことですので、私を含め、毎年十数名の社員が研修に参加し、今では数百名の社員が現地を訪れました。社員はもともと、トアルコ トラジャの生産地では、当社が地域と一体になり事業を行ってきたことを知ってはいますが、この地域で一生懸命にコーヒーを栽培する人たちの姿を目にすると、改めてこの製品を大切にしようと感じるようになるんですね。

実際に、「感動した」とか、「現地を見てモチベーションが上がった」という声が聞こえてきます。このトラジャ事業の経営を始めて以来30年、大変な時期も長かったのですが、今は続けてきて良かったと思っています。そう思えることが何より嬉しいですね。キーコーヒーは1920年に創業した会社です。お陰様で現在は、社名やロゴをご存知の方が多く、大きな財産だと感じています。一方、難しい点としては、コーヒー会社として、社会における存在意義を皆さんにどのようにご理解いただくか。この点は常に課題だと思います。

今の仕事を始めてから体験した印象的なエピソードはありますか?

社長に就任したのは私が38歳のときでした。若いということも手伝って、周囲は私にはけっこう意見を言いやすいみたいで(笑)、お取引いただいている全国の喫茶店のオーナーの方や、トアルコ トラジャの生産地のマネージャーにも、本音を打ち明けていただける場合が多いんですよね。ありがたいことだと思いますし、幸運に感じています。

担当者になってから、自分の意識や生活の中で変わったことはありますか?

社長に就任してから、「個人的にはこう思う」という発言をしなくなりました。この職に就いた以上、たとえどんな席においても、自分の意見が会社を代表するものと捉えられることについて受け入れるほかにありません。どんなに、「これは個人的な意見ですが」と前置いたとしても、言葉がどのように一人歩きするかを管理することはできないのですから、責任の持てない発言は控えるべきだと考えています。社長は24時間社長なのだと意識して、昔なじみの友人と居酒屋で飲んでいても、そこは厳しく自分を律しているつもりです。

社会貢献活動においては、時間が許す限り、自ら率先して動き、現場に立つようにしています。社長が動くとスムーズに事が運ぶことって、実はけっこう多いんですよ。イベントの際には顕著ですが、まず、自分が声を掛けると、外部の方を含め、人が集まりやすいです。それに、せっかく良いことをしようとしているのに、担当者はちょっとしたことでも会社や上司に許可を取る必要があったりして、大変な思いをしてしまいますから。

社会に伝えたいメッセージをどうぞ!

多様性を尊重すること。そのためにも、欧米だけではなく、他の文化圏にも目を向けること。そこから学ぶべきことはきっとたくさんあるはずです。

 

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