クリックで救える命がある。

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山本 善太

vol.75


PROFILE

カゴメ株式会社
コーポレート・ブランド戦略室
コーポレート・ブランド部長

現在の会社での経歴と担当している主な活動

1985年入社。営業、マーケティング、広報を経て、2003年4月コーポレート・ブランド部。2004年12月より現職。
ブランド戦略、社内広報、食育支援活動、WEBコミュニケーション、デザインマネジメントなど業務領域は広い。
社会貢献に近い視点で「食育支援」に取り組んでいるが、 「食への関心は経験が育む」との考えから、近年はトマトの苗を小学校に提供し、総合や生活、教科の時間を使って、学習に役立てていただく活動に力を入れている。

趣味

日常的な読書や水泳のほか、仲間とロックバンドを組んでライブをやったり、毎年必ず沖縄の島巡りに出かけたりと多趣味。風呂上りのビールを楽しみに銭湯に通うのも趣味のひとつ。

好きな国or行ってみたい国

もともと南国嗜好なので、沖縄の島々をこよなく愛している。海外だと南欧のポルトガルやスペインが気になる。

影響を受けた人、尊敬する人、目標にする人

特定の誰かにはしぼれない。

一番大事にしているもの

遊びごころ。何事も楽しもうとする姿勢が大切だと思うから。


山本さんが描く、理想的な社会とはどんな社会ですか?

利他的な社会と言い表せるような社会でしょうか。生態学では、相互が助けあってそれぞれの適応度を高める戦略を互恵的利他主義というそうです。ただし、このことをあまり声高に唱えても、競争を前提にしている企業社会においては時に矛盾が生じます。しかしながら、社会のどのような在り方が、サステナブル(持続可能)と定義される姿に重なるかと言えば、私の答えは、やはり「利他的であること」ではなかろうかと思います。矛盾をどう解消していくべきかは悩ましいところですが、できるだけ多くの人がハッピーであろうとすればするほど、行き着くのはそこなのではないかと思いますね。私は沖縄が大好きで、年に一度は訪れているのですが、近年になり、沖縄、とりわけ石垣島の人口が急増しているのが気になっています。いろいろな媒体を通して見る石垣島は非常に美しいリゾートです。画一的にパラダイスのようなイメージを売り出されていますが、実際に美しいですし、休暇で訪れるともちろん楽しいわけです。多くの人が「いいよね、癒されるよね。こんな所に住んでみたいね」と憧れるのも無理はないと思います。

けれどその一方で、沖縄の人たちが、基地問題や観光産業に葛藤を抱えている実情について、顧みる観光客は少ないと思うのです。観光客用のリゾート施設が美しい自然環境に少なからぬ影響を与えていることと、全国一所得水準が低い中で、観光が大きな収入源になっているということは、沖縄の人たちにとってある種のジレンマですよね。また、東京のような都会から移住した人たちは、それまでの人間関係に疲れているので、移住先に行ってまで土地の人とのコミュニケーションを求めていないといった話も聞きます。観光客も、せっかく沖縄を訪れたのに、ホテルリゾートの中だけですべて完結してしまうというような傾向もあるようです。地域の抱える問題にあまり目を向けず、地元の人たちと交流することもなく、憧れで移住を決める人たちと、それに対して複雑な気持ちを抱いたまま彼らを迎える地元の人たちとの間に溝ができたとしても、仕方のないことだと思います。沖縄だけではなく、同じような話はここかしこにありますね。理想として利他と言えども、どちらにとってもハッピーであるというのは簡単なことではないのかもしれません。時々暗澹とした気持ちにさせられることもあります。

どうすれば、この理想的な社会を築いていけると思いますか?

教育の果たす役割は大きいと思います。現在の教育では、人間として知っていて当たり前のことは意外と教えられていないのではないでしょうか。そのひとつは、リベラルアーツに類する学問です。明治あたりまでは、日本では漢籍(漢文で著された中国の書物)が、一般教養だったと聞きます。夏目漱石にしても、森鴎外にしても、明治期の知識人には、何千年もの歴史と文化から学びえるものが身についていたでしょう。その上に、いろいろな仕事が乗っかるわけです。翻って、現代の教育では、学力をテストの点数で測るしかなくなってしまっており、暗記やそれに伴う訓練に偏った学習がなされています。それも必要ではあるのでしょうが、人間として真に大切なものが何かを判断する力が失われてきてはいないでしょうか。ふたつめは、コミュニケーション力です。コミュニケーションの方法は時代と共に多様化し、メディアやITの発達もあって、今は非常に迅速で便利になっていますね。

ところが、逆に、人間が本来持っているコミュニケーション力は、相対的に落ちていると思えてなりません。私は、コミュニケーション力は人との関わりの中でしか養うことのできないものだと思っています。そして、関わる人が多様であればあるほど高度に養われるように思います。三世代が当たり前に同居した大家族の時代は、生まれた時からいろいろな人間に囲まれて育ったわけですが、核家族化、少子化が進み、地域のつながりも薄い現代では、多様な人間関係の中で自分をみつけてゆくことがたいへん難しくなっています。同じことをもっと大きな世界、たとえば国と国との関係にも置き換えることができます。外交などは、まさに国と国とのコミュニケーションにより行われるものですが、多様性を受容し、その中で切磋琢磨できる国が、最も力を発揮できるのではないでしょうか。

今の仕事をしていく上での喜びと、逆に難しい点は?

カゴメでは、全国の小学校の14〜15%にあたる約3,400校にトマトの苗を寄贈しています。食育支援の取組みの一環ですが、子どもたちが栽培している様子を写真で見たり、トマトを食べられなかった子が、トマトを育てることで食べられるようになったという話を聞いたりすると嬉しくなります。子どもたちにとっては、トマトを育てていることそのものが喜びであり学びなんですよね。生き物を育てるというのは、そういうことだと思います。トマトに限りませんが、現代は、生き物や食べ物と、自分の命がどこかでつながっているという感覚が希薄になっているのではないでしょうか。

つまり、生物が相互につながり合って形成されている世界を、リアルに実感しにくい世の中なんです。私は、そうした感覚を理屈抜きで取り戻すには、実際に触れるしかないと思います。座学では何を教えても身につかないと思いますね。反対に、それがプランターで育てるトマトひとつであっても、子どもたちに感じてもらえる何かがあると思っています。難しい点は、結局座学では「食」や「命」のことはわからないということでしょうか。大人がいくら“教えよう”としてもすぐに限界がきますからね。

今の仕事を始めてから体験した印象的なエピソードはありますか?

ありがたいことにカゴメは、種々のブランドイメージ調査で上位に入ることが多いんです。もちろん大変光栄なことで、ありがたいと思っていますが、実は社員である我々自身は、そんなに評価されているのか、という感じなんですよ(笑)。企業理念の「感謝」、「自然」、「開かれた企業」ということを反映したのか、創業以来、ものごとを愚直に見る風土がカゴメにはあるんでしょうね。そうした、誠実さや正直さのようなところが遠く起因して、皆さんにご評価いただけるイメージを作ってくることができたのかもしれません。

私は仕事柄よく「ブランド」という概念について考えます。ある時は「評判」であったり、またある時は「志」であったりと、考えれば考えるほど難しい。「ブランド価値経営」を掲げている当社としても、イメージとしてのブランドだけが一人歩きしないよう、しっかりと気を引き締めて、あるべき姿を描いてゆかなければいけませんね。

担当者になってから、自分の意識や生活の中で変わったことはありますか?

視野に広がりができたと思っています。見える範囲が広がったというよりは、自分の視界には入ってこない、見えない部分の方がずっと大きいのだというものの見方です。

そして、見えないところにこそ大切なものがあるのだという意識が非常に強くなりました。

社会に伝えたいメッセージをどうぞ!

ハッピーでありたいと思います。「自分さえよければ」という言い回しがありますが、自分さえよければハッピーという状態は、本当は成立しないんですよね。

人間は、本来、利他をもってハッピーになるようできているはずなのですから。みんなでハッピーの輪を広げていきましょう。

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