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岡田達雄

vol.59


PROFILE

株式会社TfE
代表取締役

現在の会社での経歴と担当している主な活動

米国で工学博士号を取得し京セラに入社。
猛烈ビジネスマン時代を経て退社後87年よりベンチャー企業の創業に携わる。
現在は環境技術を持つベンチャー企業に特化した投資会社蝪fE(Technology for Ecology)をはじめ、複数の会社を経営するかたわら、99年に設立した環境NPO、グローバル・スポーツ・アライアンス(GSA)の常任理事として国内外で精力的に活動中。

家族構成

妻、娘二人(20歳、18歳)

趣味

アウトドアスポーツが好きで、中でもヨットは学生時代からの趣味。有機農業の実践。

好きな国or行ってみたい国

数々の国と場所を見てきたが、一番好きなのはケニアのサバンナ地帯。(赤道直下だが)標高が高いため冷涼で爽やかな気候で、野生の動植物が豊かな大変美しいところ。訪れると大抵、読書をする以外は何もせず骨休めに専念する。

影響を受けた人、尊敬する人、目標にする人

京セラの創業者、稲盛和夫氏。京セラ退職後も個人的に親交がある。経営者として偉大であるのは言うまでもないが、厳しさとやさしさを併せ持つ人間性にも深い魅力を感じている。ただし、今自分が取り組んでいるNPOの活動を、官・民・公の中の“公”の活動と位置付けると、同じ領域で目標にできる人は現在までみつかっていない。

一番大事にしているもの

生態系そのもの。生命を尊重すること。


岡田さんが描く、理想的な社会とはどんな社会ですか?

一言で表現すると、「今日よりも明日の方が空気がきれいな社会」です。今はその逆ですよね。私は、持続可能な社会の実現に欠かせない要素を、人づくり、経済づくり、地域づくりの三つだと考えています。まずは一つ目の人づくりですが、生命を大切にする気持ち、多様性を大切にする気持ちを育むことができなければ、平和な社会は築けません。それは今の世界を見ればわかることです。戦争は、最大の環境破壊であり、すべての持続可能性を断ち切るものだと思っています。二つ目の経済づくりは、従来型の大量生産大量消費ではもちろんなく、人間のクリエイティビティや匠の技を生かした高付加価値の商品やサービス、エンターテイメントを指しています。

三つ目の地域づくりは、簡単に言うと自然科学に則った社会基盤づくりです。今の都市のように土が全部コンクリートで覆われているようでは駄目ですね。人が日々移動しなくても暮らせるようであることも条件のひとつです。この三つの中でとりわけ重要なのは人づくりです。私はよく「人の意識に木を植える」という言い方をしますが、意識の中に木を持った人が世の中の大半を占めるようになれば、「今日よりも明日の方が空気がきれいな社会」が実現されるはずです。

どうすれば、この理想的な社会を築いていけると思いますか?

持続可能な社会の実現に欠かせない三つの要素の中で最も重要なのは人づくりとお話しましたが、環境問題にしろ何にしろ、人々の意識の高まりがなければどうにもならないわけです。新しい社会を創る力を公式にすると、力=人数×意識×行動だと思うんですね。

経験上確信しているのは、意識が変われば自ずと行動も変わり、行動が変わればより意識が高められるということです。これはポジティブなスパイラル現象で、何かのきっかけで少しでも環境に対する意識を持つようになった人であれば思い当たると思います。社会は個人の集合体ですから、意識が変われば社会が変わるのです。

今の仕事をしていく上での喜びと、逆に難しい点は?

あちこちで環境の大切さを話して歩きますが、ポジティブな反応をダイレクトに感じられる時、更にはそれにより行動が変わったのを見たときは最高に嬉しいです。私はグローバル・スポーツ・アライアンス(GSA)というNPOで、スポーツを通して環境問題に取り組んでいます。なぜスポーツかというと、汚れた空気の中でスポーツをして楽しいという人はいないので、スポーツを愛する人は環境問題を自分の問題として実感しやすいからです。当初テニスをする人を対象に活動を始めたのですが、著名なプロテニスプレーヤーから一般の愛好家まで、まず100%共感と賛同が得られ、手応えを感じました。小学校で話すこともありますが、その場合も運動会の会場で話すのが一番効果的なんですよ。

核家族化が進み、ちょっとした疑問や悩みを解決してくれる先輩ママが側にいない現代のお母さんの不安を表しているのでしょう。以前一度、このサイトの会員さんのためのオフ会も開催しました。参加者を募集をしたところ、なんと1500名の希望がありまして、その時は仰天しました!皆さんがベビーカーで押し寄せるシーンを想像して、うまくいくか心底心配になりましたが(笑)、お陰様で無事成功しました。妊娠、出産、子育ての時期を、できるだけ豊かなものにするために役立つイベントはいろいろ実施してきていますが、これだけニーズがあるのですから、お役に立てていると思うと嬉しいですね。

今の仕事を始めてから体験した印象的なエピソードはありますか?

この話をしだしたら一日かかりますけど(笑)。92年に新潟のスキーリゾート開発に携わったことです。私はもともと機械工学出身で、土木の知識はそれほどなかったのですが、その仕事を手がけるにあたって土木の現場で為されていることを知った時は唖然としました。開発では大量の表土を削り取る作業があります。削り取られるこの土は、実は土壌生物の宝庫なんです。植物の種子や微生物をはじめ、その地域固有の生態系のエッセンスが長い長い年月をかけて蓄積された、言ってみればひとつの宇宙のような素晴らしいものです。一方表土を削り取った後に出てくる赤土には栄養分がまったくない。ここに植物は生えてこず、赤土はじきにボロボロになって崩れてしまいます。一度削り取った表土を造成後に戻せば良いのですが、工事を急ぐ現場では、表土は埋め立てられてしまいます。そして、赤土の方に化学肥料と外来種の種をホースのようなもので吹き付けて、人工的に緑を作るのです。吹き付けられる種は、緑に着色してあり、吹き付けの際にうまく土にくっつくように糊まで混ぜてあるというシロモノです。

ぼちぼち発芽しますが、もともと栄養分のない土なのであまり育っていきません。これを土台にしたスキー場は雪崩が起きやすいですし、自然の生態系は再現されるはずもありません。ちなみにこのやり方は違法なわけではなく、国土交通省が定めた規格に則ったものですが、これではまさに、開発イコール環境破壊でしょう。大きな経済的課題を前に考え抜いた末、私たちはこのスキーリゾートを環境共存型として世界に誇れるものにしようと決めました。そして、環境土木の専門家を招くなどしながら、通常の開発工事水準をはるかに超える環境保全対策を講じて完成させました。後に長野オリンピックの工事関係者も視察に訪れましたよ。私にとってこの仕事が、地球環境問題に目を開かせるきっかけとなったのです。

こうしたらもっと社会が良くなる、というアイディアはありますか?

大人たちが、子どもが学校で習うことと整合性のとれた行動をすることだと思います。難しいことではないんですよ。環境面で言えば、植物が光合成により酸素をつくり、水の蒸発によって地表面の温度を取り去ると理科で習うわけです。けれど大人がしてきたことは何でしょう。緑を減らし、土をアスファルトで固め・・・ここへきてCO2やヒートアイランド現象を大問題だと言っています。教育を受けたいい大人が、こういう世の中を作ってきた。学校教育は社会づくりに生かされていないわけです。

社会に出て生かされないことを学ばされるのだとすれば、子どもたちが教育に不信感を覚えても、学校離れが進んでも仕方がないと思いませんか?学校で教えていることと実社会とのつじつまがもう少し合っていなくては。学校で習ったことが素直に生かせる社会なら、生徒のみならず先生もやる気が起きるでしょう。 CSRの登場によりこれも徐々に正されてくるでしょうが、学校を卒業した途端、「そのような常識はさておいて、うちの会社の方針に従ってください」というような矛盾のある社会では困ります。

担当者になってから、自分の意識や生活の中で変わったことはありますか?

環境汚染、自然破壊に加担することはできる限りやめようと決めましたね。もちろん、人間は生きているだけで環境に何らかの負荷を与えてしまうわけですが、それを最小限に留めようと努力することは誰にでもできます。例えば私は、通勤にマイカーは使いません。都内は渋滞がひどく、環境に百害あって一利なしです。東京は道路事情が悪いと言いますが、道路を整備するのではなく車を減らす方が環境のためにも人のためにもずっと有益です。自宅の庭は、コンポストで肥沃な土づくりをし、緑でいっぱいです。見た目もさることながらエネルギー効率を考えてのことです。

。妻はあまり快く思っていないようですが(笑)、外壁にツタも這わせています。また、農薬で土が汚染されることを良しとしませんので、有機農産物を食べるようにしています。実はそれが高じて先ごろ「銀座ストック」という有機食材の小さなビストロの経営を始めたんですよ。そこはもともと銀座で長年営業していた有名なバーでした。名バーテンダーだったご主人が老齢になり引退されたのを受け継いで、外装も内装もほぼそのままに、ビストロに再生させたものなんです。

社会に伝えたいメッセージをどうぞ!

土が大事です。それにつきます。一説によると、地上と地中との生物を総重量で比べると、地中の方が重いそうです。すごいと思いませんか?古代まで遡っても、土を疎かにした文明は衰退し滅びています。古代の文明では、過剰な放牧により肥沃な表土が雨風に流されてしまう状態をつくってしまったがゆえに、食糧に困るようになり、弱ったところを外敵に滅ぼされてしまったというのが大体のパターンです。

一方現代では、土をすべてコンクリートで固めてしまっています。本来雨水は土に浸透し、地下水が涵養(かんよう)されるはずなのに、土管を通って海に流されている。繰り返しますが、学校で習ったことに立ち返ってみれば、これがいかに間違った社会づくりなのかがわかります。 ──何が空気をきれいにするか知ってますか?その答えは、豊かな自然環境です。そして、豊かな自然環境を育むのは、肥沃な土なのです。

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