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桂一朗

vol.54


PROFILE

株式会社ワコール
執行役員 総務部長
兼 CSR推進室長
※2005年4月より社長室長兼務

現在の会社での経歴と担当している主な活動

1975年入社。宣伝部に配属(13年勤務)後、社長交代に伴い社長秘書に。
その後、ホンコンワコールの社長を5年務め、帰国後は社長室へ。
宣伝部長、業務推進部長を経て現在、総務部長兼CSR推進室長。
(※CSR推進室は2004年4月に新設)2003年より執行役員。

家族構成

妻と大学生の長女、長男

趣味

オフロードバイクと庭いじり。常に仕事のことが頭から離れないタイプだが、このふたつのことをしている時は別。自然の中に浸ったり、“無”になれる感じが良い。

好きな国or行ってみたい国

以前駐在した香港。大変な苦労もあったが、それだけに得るものも大きく、今はその時の経験が財産になっている。今もたくさんの仲間がいるので第二の祖国のようにも感じている。

影響を受けた人、尊敬する人、目標にする人

これまでに関わったすべての人

一番大事にしているもの

家族(BUZZという名前のフレンチブルドッグを含む)


桂さんが描く、理想的な社会とはどんな社会ですか?

「自然が大切にされ、平和で人間らしさが阻害されることなく育まれる社会」を目指す文明社会が理想です。これまでは、自らが開発した文明の利器に、逆に人間が振り回されているケースが多かったと思いませんか。発明や進歩が人間性を失わせていたように感じられてなりません。身近な例でお話しすると、当社では現在、休暇願いの申請・受諾がオンラインでできるようになっています。部門長がボタンひとつで認可を出せる大変便利な仕組みです。しかし、以前はこうした届け出は全てフェイス・トゥ・フェイスで行われました。「これこれこういう理由で休ませてください」という具合にです。家族が入院しているだとか、単身赴任のご主人が帰ってくるからとか、趣味でやっている音楽の発表会があるだとか、理由は様々ですが、それをきっかけに会話が生まれ、ひいては部下のちょっとした事情や、知らなかった一面を垣間見ることができました。人間関係が、相手のことを理解することから始まるのは職場においても同じことです。また、仕事は人間関係ありきだと私は思っています。ITの登場により、人間らしいコミュニケーションが殺がれてはいないでしょうか。

IT化により仕事が効率化され少量化された分、ゆとりができたから、職場内のコミュニケーションが増えたという話を聞いたことがありますか?これでは、実のところ人間が振り回されていると言うほかない気がします。うちの娘も就職活動でパソコンからたくさんの会社にエントリーしていましたが、最初の選考とはいえ、パソコン上のやりとりで就職試験に受かったり落ちたりということに、私は少なからず違和感を覚えましたね。もちろん、パソコンを否定しているのではなく上手に付き合わないといけないということです。そしてもうひとつ、どうしても欠かせないのは、平和であることです。同じ地球に暮らしているのに、あまりにアンバランスでやるせないですよね。私たちが「今日何食べに行く?」などと会話している同じ時に、戦争の恐怖に怯えている人がいる。「もったいない」は、日本の子どもたちにとっては死語だとも言われていますが、世界には飢餓に苦しむ子どもが大勢いる。日本人は未だにこうしたことに対する意識が足りないと感じています。

どうすれば、この理想的な社会を築いていけると思いますか?

やはり教育なのだと思います。しかし、教育と言っても、例えば学校の教科で「環境」というのをつくって勉強させれば環境教育が万全かというとそうではない。どんなことでもそうですが、やらされていると思ってすることにはすぐに限界がくるからです。そうではなく、生活のあらゆるシーンに織り込ませ、自然と身に付けるような教育が必要なんだと思うのです。日本は島国ですから、今もって他国との関係性に鈍感なところがあります。日本で紙を無駄づかいすることが、途上国の木を減らし、水害を引き起こす遠因にもなるように、私たちが責任ある行動をとらなければ、他の国の見も知らずの人を脅かす結果になるということを覚えておかなくてはいけません。

地球規模の問題を個人の問題に落とし込んでいくには、大きな意味での他者との関わりの全体像を見せつつ、その上で個々に何をすべきかと考えることが必要です。そこでまたコミュニケーションが必要になるのです。繰り返しになりますが、「こうしなさい」というのは簡単でも、やらされていると思ってすることに、すぐ限界がくるのは子どもも大人も変わりません。私たちが他国に与えている影響のように、普段目に見えないものを是正していこうとする原動力は、心が動いて初めて芽生えるものです。まずはリーダーたちが自らの襟を正し、手本を見せることかもしれませんね。

今の仕事をしていく上での喜びと、逆に難しい点は?

CSRの中で取り組まなくてはいけないことを、余計な仕事と思わせないこと。何がどうして大切だからやるべきなのだと理解してもらうこと。そして体質化させること。決して簡単なことではありませんが、わかりやすく伝えるのが私たちの仕事です。

目に見えて成果が見えたときは本当に嬉しいですね。もともとワコールという会社の中には、ずっと以前から長い時間をかけて体質化してきた、CSRに通ずる精神が生きているんですよ。ただ、それをPRする気がなかったのか、下手なのか、なかなか社内外共に知られていないんですよね(笑)。

今の仕事を始めてから体験した印象的なエピソードはありますか?

あるきっかけで知り合った、東京にある銀座文具というオフィス用品の会社の社長さんに、「桂さん、御社の社員のデスクの中に、文房具がどれくらい眠っているか一度調べてご覧なさい」と言われたんですね。面白いアイディアだと思い、6月の環境月間に全社的に実行してみました。すると合計で何十キロという、使っていない文房具があったんですよ。これには驚きました。

環境月間には、自宅で余っている洋服を途上国に送ることも企画しました。これに関しては、電車やバスで通勤している社員も大勢いますから、もしかするとさほど集まらないかもしれないと思っていましたが、予想をはるかに上回る量が集まりましたね。こうした、社員参加型の、身近なところから問題提起できるようなイベントを考えるようにしています。

こうしたらもっと社会が良くなる、というアイディアはありますか?

相手の立場に立って考えることでしょうね。私たちのようなメーカーでは、“顧客の視点に立つ”ということが頻繁に言われますが、個人でも企業でも国でも、結局それに尽きると思います。確かにこれは簡単なことではなくて、私だってできているかと言えば、できていないから夫婦喧嘩になったりします(笑)。

けれど努力しなくてはならないんですよね。要するに自分さえ良ければという考え方が、環境問題なり、もっと言えば戦争をも引き起こしているのですから。

担当者になってから、自分の意識や生活の中で変わったことはありますか?

どこから見られても後ろ指さされないよう心がけるようになりましたね。けっこうしんどいんですけどね!それに、いろんなことが気になって仕方なくなって・・・。もともと、例えば電車の中でマナーの悪い人がいると注意するタイプなんですが、それにますます磨きがかかって黙っておけなくなってしまい、妻には心配されていますよ。

いつか逆ギレされるんじゃないかって(笑)。犬を飼いだしてから、地元の「ブンブンしっぽの会」というのに入って、犬のウンチを掃除して歩く活動をしていますが、もしも飼い主がウンチを放置しているのを目撃しようものなら、その人の家に「忘れ物です」と届けに行こうかなと思っているくらいです(笑)。

社会に伝えたいメッセージをどうぞ!

「生かされている」と思うこと。自分ひとりでは絶対に生きていけないのですから。普段どれだけえらそうにしていても、奥さんがいないと困ったりね(笑)。農家の人がいるから野菜が食べられる。

その野菜は水や太陽があるから育つ。桜が咲いて春の訪れを、紅葉に秋の訪れを知り、その美しさに心が和んだりするわけです。ですから、まわりの人や自然に生かされていることを忘れないことです。

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