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幅野則幸

vol.52


PROFILE

株式会社イトーヨーカ堂
コーポレートコミュニケーション部
兼社会・文化開発室 総括マネジャー

現在の会社での経歴と担当している主な活動

入社後、店舗での販売業務、情報システム部勤務を経て、1995年より社会・文化開発室担当。
お客様、地域社会と連携した社会・文化活動、災害発生時の被災地への支援活動を推進。
2003年からはコーポレートコミュニケーション部兼務となり、社外およびグループを含めた社内へのコミュニケーション誌の編集、発行をはじめ、さまざまなステークホルダーとの情報交換、情報発信を担当。

家族構成

妻と高校生の長女、中学生と小学生の長男、次男

趣味

スキー、キャンプ、ドライブなどを家族で楽しんでいる。

好きな国or行ってみたい国

今一番行ってみたいのは中国。数年前に訪れた際、大きな変化の過程の中で、一生懸命チャレンジしている人々の強いエネルギーに触れ、パワーをもらった気がした。次は家族で行って、そんな中国の活力を子どもたちにも体験してもらいたい。

影響を受けた人、尊敬する人、目標にする人

IYグループのCEO鈴木敏文。「お客様の立場を第一に考え、お客様の目線で自分達の仕事を見直していくのが小売業の基本」という一貫した信念と、その一方で、常に新しいことに挑戦し続ける姿勢に多くを学び、尊敬している。

一番大事にしているもの

家族


幅野さんが描く、理想的な社会とはどんな社会ですか?

助け合い、支え合い、互いを思いやりながらつくってゆく社会です。企業としてCSRを考える時も、すべてのステークホルダーと共に手を携えて、より良い社会をつくり上げてゆくという発想が大切です。具体的に言えば、環境に配慮した生活をすることや、災害時の助け合いもそうですが、特定の誰かだけが頑張ったとしても大きな効果は見込めません。企業は、その重要性を発信していく必要がありますし、関連部署のみではなく、全従業員が同じベクトルに向かって努力をする必要があります。

例えば私たち小売業が、環境に対して、事業活動を通じてできる最も重要なことを突き詰めると、お客様が求めていらっしゃるものを必要な時にきちんと提供することなのだと思います。それを見誤ることで、大量の廃棄物を出してしまうリスクがあるからです。従業員がそうした側面にも意識を持つことは非常に重要なことです。また、担当者としての理想を言えば、従業員が、プライベートにおいても、それぞれの地域を構成する一市民として、会社生活の中で得たものをフィードバックしていけると素晴らしいと思っています。

どうすれば、この理想的な社会を築いていけると思いますか?

少しの思いやりと知恵で解決できることは、日常の中にたくさんあると思うのです。私たちはユニバーサルデザインの商品を販売していますが、どんな人にとっても使いやすいというのは、本来であれば当たり前のことで、その逆であることがむしろ問題なのだと思います。全ての商品がユニバーサルデザインになれば、使いやすさは特定の商品の謳い文句ではなくなり、使うほうも当たり前にそれを享受できるようになります。同じことが環境配慮型の商品にも言えますよね。)

ユニバーサルデザインやCSRなど、ここ数年間で一気に拡がってきた概念です。今はまだ過渡期で、全体として不十分ではありますが、社会の中に確実に浸透していっているのも事実でしょう。この「浸透させる」という部分で企業は大きな役割を果たし得るものだと思います。私たち小売業は、日々たくさんのお客様と接している業態ですから、責任重大ですね。常に誠実なメッセージを発信することを心がけています。

今の仕事をしていく上での喜びと、逆に難しい点は?

社会の中で重要な責任を担っているという気持ちがやりがいにもなっています。大きな災害時にはイトーヨーカドーの店舗でも義援金を募りますが、毎回非常に多くのお客様の善意をお寄せいただきます。中には多額の現金をお持ちになるお客様がいらっしゃる場合もあります。「ここに持って来れば安心だろう」と託してくださっているのですから、企業としての信頼があってこそだと受け止め、大変ありがたく思っています。同時に、こうした信頼は決して裏切れないものですから、身の引き締まる思いを新たにしますね。難しいのは「コミュニケーション」です。お客様に対しても従業員に対しても、企業として、発信していくことが必要です。しかし、コミュニケーションというものは、双方向であることが必要なのです。

トップもいつも言っていることですが、つまり対話として成り立たないものは、コミュニケーションではありません。多くの企業が環境報告書やCSR報告書を発行するようになりましたが、これも発行すれば完結するものではありません。多くの人に読んでもらい、読者から声を集め、そしてそれをフィードバックし、次の行動につなげていくという形で着地させて初めて役割を果たしたと言えるのです。これをいかにして行うかは仕事をしていく上で常に課題ですね。コミュニケーションの大切さが身にしみているからこそ、難しさも感じています。

今の仕事を始めてから体験した印象的なエピソードはありますか?

イトーヨーカドーではいくつかの店舗に「子ども図書館」を設置しています。以前、この図書館のうち、子どもたちの数が減ったり、地域に公立の図書館ができて利用者が減少した所に関し、お役目終了と判断して閉館することにしました。ところが、これに反対する地元の方が閉館反対の署名を多数集めてお持ちになったんですよ。思いがけないことだったので、びっくりしました。地元の方がおっしゃるに、イトーヨーカドーの「子ども図書館」が支えてきたのは、子どもの読書だけではなく、あたたかいコミュニティーそのもので、それはいくら設備の整っている公立の図書館でも補えないものだということなのです。地域で親子の交流の場として親しまれて来たのですね。必要とされているということは嬉しい限りでしたので、結局閉館は見送ることにしました。

また、三宅島の噴火で避難し、都営住宅などに入居された方に、生活物資をお届けした時のことはよく覚えています。その時は、都の職員の方が、何が必要なのかを数千所帯に個別にヒアリングしてリストを作り、それを受けて私たちが物資を用意しました。大きな家電から、お茶碗までいろいろなものです。数ヶ月にわたり、準備には細かい作業もあり大変でしたが、その分、ご苦労されている三宅島の方々の現実が少し理解できた気がしました。あれから4年半の年月が経ち、今ようやく一部の方たちの帰島が始まったというニュースを見て、改めて長期間にわたる避難生活にお見舞い申し上げるとともに、今後の一日も早い復旧をお祈りしたいと思います。

こうしたらもっと社会が良くなる、というアイディアはありますか?

モノを作る人、モノを売る人、サービスに携わる人、それぞれのところで気を抜きさえしなければ守れる環境や安全がたくさんあります。起こりえないような間違いが起きているのは、やはり意識の欠如が原因でしょう。こうした基本的な意識を根付かせるためには、それなりの社会システムが必要です。

例えば子どもの教育にしても、従来のように家族や学校が全て責任を持つのではなく、社会全体でそれを行うという発想が必要とされていると思います。

担当者になってから、自分の意識や生活の中で変わったことはありますか?

ひとつのモノに対して多様な視点を持つようになりました。環境に配慮しているか、ユニバーサルデザインになっているか、消費者本位にできているかどうかなど、ある意味以前よりもモノを見る目が厳しくなったとも言えますね。私生活で家族に、「何でそんなに細かいの?」と言われるほどです(笑)。

もともと意識は持っていたつもりですが、仕事として直接携わってみると、頭で考えていたのとは差異があることがわかりました。世の中には以前の私と同じような方も多いと思うので、より多くのきっかけが必要なのでしょうね。

社会に伝えたいメッセージをどうぞ!

人は一人では生きてゆけませんから、自分の都合だけではなく相手のことを思いやらなくてはいけません。これは簡単そうでとても難しいことです。例えば、親が子どもに勉強しなさいと言う時、本当の意味で子どもを思いやっているとは限りません。もしかすると、子どもにとってはその時しかできない、勉強よりも大切な何かがあるかもしれません。親子ですらそうなのですから、相手の立場に立って考えるというのは容易なことではないのです。

しかし、特にこれからやってくる少子高齢化社会においては、支え合いがどうしても必要になります。相手を思いやる気持ちは、持続可能な社会をつくっていく上で核になるものだと思います。大変なことだし、勇気のいることですが、それに挑戦してみようではないですか。

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