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喜井哲夫

vol.49


PROFILE

オムロン株式会社
法務・総務部兼良き企業市民推進センタ
担当課長 主幹

現在の会社での経歴と担当している主な活動

入社後、現在のインダストリアルオートメーションビジネスカンパニーにて制御機器の営業、商品企画、営業企画に従事。
2002年に現職に。地震対策や保険等のリスクマネジメント業務と良き企業市民活動の業務を兼任。

家族構成

妻と、ペットの緑フグ

趣味

音楽、絵画鑑賞、お祭りに参加すること。音楽はクラシックをかけると仕事がはかどる。

好きな国or行ってみたい国

パリが好きで、美術館めぐりをしたい。

影響を受けた人、尊敬する人、目標にする人

入社以来これまで経験してきた各セクションで、「諦めずに続ければ必ず何かを得られる」ということを学んできたように思う。そうしたことを教えてくれた上司、先輩を尊敬している。

一番大事にしているもの

「信頼する」ということ。


喜井さんが描く、理想的な社会とはどんな社会ですか?

違いを認め合い、それによって共生できるような多様な社会です。──30数年前にオムロンの創業者が描いた「SINIC理論」いわば未来予想図があります。それによると、高度成長の後、ちょうど今くらいから“最適化社会”がやってきて、人が機械に合わせてきたのが逆転し、機械が人に合わせるようになる。その後、現在より少し先の未来には、“自律社会”が訪れるだろうと予測しています。

“自律社会”についてはさほど具体的ではないものの、自分の生き方を追求する中で、より精神的豊かさを重視するような人間的欲求の自己実現を求める社会と表現できるでしょう。こうした中で必要になってくるのが、前述した、違いを認め合うことだと私は思うのです。また、均一ではなく多様な社会こそが強い社会であると考えるからです。

どうすれば、この理想的な社会を築いていけると思いますか?

日本はまだ、いわゆる弱者にやさしい社会ではないですから、インフラの整備など、行政が担う部分での改善の余地は大きいのではないでしょうか。弱者にやさしい社会ではないと言いましたが、意識面から言うと、違いがわからないからやさしくなれないのだと思うのです。最近ではバリアフリーという言葉が当たり前に使われるようになりました。しかし、例えば、駅の周辺には未だに大量の自転車がとめられていますよね。子どもは大人のすることを見て育ちますから、やはり知らず知らずに、それで困る人の存在を思いやれないようになる。

行政にしても駅の管理者にしても、もっと厳しく取り締まるべきなのに、今ひとつ事なかれ主義です。誰かの立場になるということは簡単ではありませんが、だからこそコミュニケーションが大切になるはずです。また、社会の中には、行政や企業が本来の業務、事業の中では担いきれない部分があります。そこでボランティアが必要なのだと思います。

今の仕事をしていく上での喜びと、逆に難しい点は?

良き企業市民活動の担当者として嬉しいのは、普通に給料を得ながら、直に人に喜ばれる、ポジティブなことをできるところ。つまりこの仕事そのものですね。企業価値を高める仕事だと信じてもいます。難しい点には、個々の社員のボランティア精神の積極性を促すことがまずあげられます。5月10日の創業記念日は「オムロンデー」といって、世界中の社員が地域への感謝を込めて、一斉にボランティア活動を行います。これを、個々の社員の自発的、継続的な活動につなげたいところなのですが、現状では今一歩及んでいないように思います。もうひとつは、オムロンらしい社会貢献活動のあり方をどのように形づくっていくかですね。

これはとても難しく、今も模索中です。今後企業は、本業に関連させた戦略的な社会貢献活動を実施していくと考えられます。これは周りから見ても非常に納得のいくものだと思います。しかし一方で、戦略的であろうとすればするほど、そこに目標が設定されるなど、いわゆる仕事化が進むように思うのです。仕事化されていくと、やって当たり前のことのようになり、人の感動を生むことがなくなります。オムロンが続けている社会貢献活動の中には、本業と離れたイメージのものもありますが、それはそれで企業としての懐の深さと言えるかもしれません。ですから、極力業績に左右されない形で継続していきたいと思っています。

今の仕事を始めてから体験した印象的なエピソードはありますか?

オムロンは大分や京都で特例子会社を設立して、障害者雇用を行っています。その関係で、大分で開催される車いすマラソンには毎年参加、協賛しており、私も現地に出向きます。車いすマラソンでは、選手として出場する人ももちろん一生懸命なのですが、ゴールを見守る親御さんが涙ぐむシーンがあり、見ている私たちも感動させられます。また海外では、タイにおける地雷除去の活動を支援していまして、先日現地視察に赴きました。そこで見たふたつ光景が強く印象に残っています。

ひとつめは、村の中にある、人の手できれいに整備されている場所と、木や草が生え放題の場所との唐突な境目の光景です。地雷があるので足を踏み入れることができないのです。もうひとつは、タイとの国境に、見るからに貧しい出稼ぎの人々が大勢列をなしている、そのすぐ向こうにカジノが見えたことです。どちらもなんとも対照的で、人間社会の不条理を考えずにはいられない光景でした。実際に目の当たりにして、人間の愚かさ、戦争のむごさに憤りすらおぼえました。

こうしたらもっと社会が良くなる、というアイディアはありますか?

ひとりひとりの意識づけが大切なのは言うまでもないでしょうが、先ほども述べたように、インフラを整えることで、制約ある人たちのクオリティ・オブ・ライフを向上させる余地がまだ十分にあると思います。国、行政の果たす役割が大きいものの、もちろん企業の役割もあります。オムロンには“社憲”というのがあり、それは「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」というものです。

「会社のために頑張ろう」と言っていないのが面白いところだと思いますが、創業時より“企業の公器性”を重視してきました。どんな企業も社会の上に成り立っています。その社会の中で変わってくるニーズをつかみ、モノづくりを通して貢献するのが、私たちの基本だと思っています。

担当者になってから、自分の意識や生活の中で変わったことはありますか?

建物や施設がバリアフリーになっているかどうか気になるようになりましたし、エネルギーの無駄づかいにも敏感になりました。

例えば、最近のトイレには、洗った手を温風で乾かす装置が備え付けてあるのをよく見ますね。「ハンカチを持ち歩けば良いじゃないか」と思ったりしています。

社会に伝えたいメッセージをどうぞ!

スポーツを見ていると、日本人は敗者にやさしいですよね。大差で負けても「よくやった!」と言います。私はこれにはあまり感心しません。その先、勝つことこそが求められる競争社会で生き抜かなくてはいけない現実があるのですから。

しかし一方で弱者にはもっとやさしくなるべきです。なぜか逆のことが多いように感じています。敗者は愛情をもって叱咤激励し、制約ある弱者にはやさしくしようじゃないですか。

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