クリックで救える命がある。

«前の語人   |   次の語人»

篠 健司

vol.41


PROFILE

パタゴニア日本支社
環境担当

現在の会社での経歴と担当している主な活動

1988年パタゴニア日本支社設立と同時に入社。広報、複数の直営店マネージャー等を務める。1999年に一度退社するが2001年に再入社し、横浜店マネージャー、ロジスティック・マネージャーを経て、現在は環境担当。環境助成金、製品寄付等を通じた環境保護グループの支援、社員の環境教育等、パタゴニアがその理念に基づきグローバルに実施している環境プログラムの日本における責任者。

家族構成

妻、長女(小学3年)、長男(小学1年)

趣味

トレイル・ランニングなど自然の中で行なうアウトドアスポーツ。料理。

好きな国or行ってみたい国

今、一番行ってみたいのは極東ロシアの原生林。将来的には社名の由来となったパタゴニア地方(アルゼンチン)

影響を受けた人、尊敬する人、目標にする人

パタゴニアの創設者でありアウトドアマンであり、更には環境活動家でもあるイヴォン・シュイナードに多大な影響を受けた。その他アイヌの環境活動家のアシリ・レラ、カナダの環境活動家のダン・ルイス、12歳の時に地球環境サミットで伝説的スピーチをした環境活動家のセヴァン・スズキ、パタゴニアのスタッフの藤倉克己など仕事を通じて出会った多くの人を尊敬している。

一番大事にしているもの

子どもたちと過ごす時間、対話


篠さんが描く、理想的な社会とはどんな社会ですか?

ある報告書の試算によると、世界中の全ての人たちが現在の日本人並みの水準で生活をしようとすると、地球が2.7個必要だそうです。ということはもう既に持続可能ではないということですよね。ひとつしかない地球の限りある資源の中で世界中の人々が文化的な生活を営めることが大前提なはずです。私たちは、物質的なものや消費することに置いている価値観を改め、ライフスタイルを変革していく必要があります。家族や友人と、自然の中で過ごす時間を大切にし、それに投資することで、子どもたちは自ずと豊かな自然の素晴らしさを知り、大切にするようになるでしょう。

過去に行われてしまったダム建設や護岸工事の中には、これから元に戻せるものがあると思います。お金と時間をかけてでも、戻す努力をはらう価値は十分にあると思います。子どもたちが生き物の多様性に富んだ魅力的な自然の中でのびのびと遊ぶ環境ができることは、病気や犯罪を減らすことにもつながるはずだからです。それによって社会的な費用を減らせるという利点もついてきます。

どうすれば、この理想的な社会を築けると思いますか?

まずは我々の生活が持続可能ではないことを知らなくてはいけません。日本が資源に乏しい国であるにもかかわらず、日本に暮らす私たちがこれだけ贅沢な生活を享受している陰では、私たちから離れた場所にある、たくさんの自然や、人々の文化と暮しが犠牲にされてきたのです。地球上で天然資源の残っている場所は、原生の自然であるか、自然と調和した伝統的な暮らしを送る先住民の住処ですから、それを更に傷つけるようなことを、もうこれ以上してはいけません。この問題に向き合うため、個人も企業ももっと広く情報を共有すべきだと思いますし、気付いた人からどんどん声を上げていかなくてはならないと思います。

持続可能な社会を構築するためには、前述したように、ひとりひとりが価値観とライフスタイルを改めることが必要です。自然の素晴らしさを知ることでそれは可能になると私は思います。実質的な部分では、日本が持つ高い技術力が大きな役割を果たすでしょう。自然エネルギーへの転換は急務です。また、真に再生可能な製品づくりに取り組むのと同時に、消費者がモノを購入する際、その製品のライフサイクルにおける環境負荷に応じて、負荷の高いものには高い税金をかけるというような、よりグリーンな選択を後押しする制度も必要だと思います。

今の仕事をしていく上での喜びと、逆に難しい点は?

自然と共生する上で知恵のかたまりのような文化を持っている人たち・・・たとえばアイヌの人たちなどと出会い語らえるような恵まれた立場にあることに、心から喜びを感じています。難しいことは、パタゴニアが支援している環境活動家が問題にしている開発によって、経済的に潤う地域社会があることも事実です。潤うとはいえ往々にして一時的・短期的なものではありますし、貴重な自然を守ることの方が優先されてしかるべきというスタンスに変わりはありませんが、それが一時的なものであっても、利益を必要としている人がいる状況は理解できます。

ですから心情的には苦しいときもあります。その部分でしょうか。ただし、パタゴニアの場合は、政治的なものや他企業に対する一切のしがらみがありません。理念を曲げることはパタゴニアの存在意義を損ねるという考え方が根付いていますから、たとえビジネス上不利益であったとしても、パタゴニアの価値観に沿った選択をするよう心がけています。ですから環境担当としてはやりやすいですね。

今の仕事を始めてから体験した印象的なエピソードはありますか?

環境活動家のセヴァン・スズキが、二度の来日で二度とも私の家に滞在しました。パタゴニアがイベントのゲストスピーカーで招いたのがきっかけですが、二回目の来日の時は光栄なことに日本に来る前から我が家への滞在を希望してくれました。彼女は、1992年の地球環境サミットで弱冠12歳にして大人を圧倒するスピーチをし、以来一躍注目を浴びました。1997年から2001年にかけては国連地球憲章の起草に委員の一人として携わるなど精力的に活動を展開しています。

様々な国を飛び歩き、ほとんどがホテル滞在でしょうから、日本で子どもが二人いる普通の家庭に滞在してみたら意外と居心地が良かったのかもしれません。彼女の本をうちの子どもにも読み聞かせたりしていましたが、このような交流が実現したことは、子どもたちにとっても非常に良い体験になったと思っています。

こうしたらもっと社会が良くなる、というアイディアはありますか?

アメリカのパタゴニアでは、大統領選をはじめとする選挙の際に、環境に対して意識の高い候補に投票しようというキャンペーンを行っています。特にアメリカの大統領ともなると顕著ですが、その政権の環境政策が自然環境に与えるインパクトを大きく左右するからです。NPOの力も増してきていると言われているものの、その影響力を考えると、環境分野でも企業が率先して牽引するべきだと思います。

企業は資産とネットワークを使ってもっと役割を担っても良いのではないでしょうか。なぜなら自然環境に恩恵を受けているのは個人だけではないからです。地球が持続可能でなければ企業も存続できないのは言うまでもありません。

担当者にになってから、自分の意識や生活の中で変わったことはありますか?

最近は、こういったインタビューを含めて、環境について公の席でお話する機会が増えました。関心が高まっているのだと思います。それだけに、情報を発信する側としての責任を強く感じるようになりました。

社会に伝えたいメッセージをどうぞ!

人も企業も自然なしでは存在し得ないものです。ただ、自然の素晴らしさを実感するには、理屈ではなく肌で感じるのが一番ですから、自然の中に入って行き、自然の中で過ごす時間をつくってみてください。得がたい体験ができると思います。何より、きっととっても楽しいですよ。

«前の語人   |   次の語人»

▲このページの一番上へ

語る

1〜101〜10

11〜2011〜20

21〜3021〜30

31〜4031〜40

51〜6051〜60

61〜7061〜70

71〜8071〜80

81〜9081〜90