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山本雅博

vol.39


PROFILE

学校法人河合塾
教務企画部 塾生指導チーム チーフ

現在の会社での経歴

名古屋校にてチューター(クラス担任、進路指導)、校舎運営の業務を6年間、進路指導を統括する部署で4年間。その後、通信衛星を使った映像授業の配信事業、大学のリメディアル(補習)授業への講師派遣事業を経て現職。河合塾の実施する社会貢献活動の中では、2000年にスタートしたカンボジアにおける教育支援活動の現代表でありまとめ役。

家族構成

一人暮らし

趣味

日帰り温泉旅行、ヨット。海や山が好き。

好きな国or行ってみたい国

今はとにかくカンボジア。いずれは他の東南アジア諸国も見てみたい。

影響を受けた人、尊敬する人、目標にする人

特になし

一番大事にしているもの

カンボジアの学校の生徒たちからもらう、たどたどしい日本語で書かれた手紙が宝物。


山本さんが描く、理想的な社会とはどんな社会ですか?

現在は、競争論理が優先されることの多い社会ですが、弱い立場にある人たちも含めて、皆が等しく権利を持って参画できる社会が私の考える理想の社会です。そこを目指すための基盤として不可欠な条件が、平和であるということでしょう。戦争がないこと。これは、大切というよりは前提だと思います。戦争は全ての社会的インフラを破壊します。その大きさは計り知れないものです。また、戦争は、実際に戦闘が行われている状態のみを指すのではなく、それが終息してもなお続くものなのだと、カンボジアで痛感しました。破壊されたもののうち、目で見ることができるものはほんの一部です。社会基盤を立て直そうとする時に、失われた目に見えないものの大きさを思い知ることになります。

私たちが支援に関わっている教育分野ですと、壊された学校よりも、教育のシステムを再建する方が何倍も時間がかかります。カンボジアの例では、教材も不足していますが、まず先生がいない、いても能力も経験も不足している、先生になってももらえる給料はほとんどないという悪循環が未だに続いているのです。更に、戦争により人が心に受けたダメージには、どんなに歳月をかけても癒えないものがあります。戦争は人々から取り戻せないものを奪うのです。ですから、どんな大義があろうとも、戦争だけはしてはならないと思っています。

どうすればこの理想的な社会を築いていけると思いますか?

まず「考えること」が必要ですが、考えるための材料として、事の実態、事実を知らなくてはなりません。ここで役割を担うのは教育であり報道なのでしょうが、これらは一側面だけしか伝えません。どうしても偏ってしまうものなのです。例えば、日本人大リーガーの活躍を日々テレビで見たとしても、大リーグの全体像を知ることは到底できないでしょう。現在のイラクに関する報道が伝えるものもそれと同じなのです。

仕方がないことでしょうが、私たちが与えられる情報とその場で実際に起きていることの間には必ずといっていいほどギャップがあります。全てを自分の目で確かめることができない以上、そのギャップを埋めるのは想像力でしかないのかもしれません。もちろん、何もかもを想像力に頼ることもできません。しかし、与えられる情報をそのまま全ての判断材料にするのではなく、想像し、洞察し、「考えること」への足がかりをできるだけ多く得るべく、ひとりひとりが挑戦していかなくてはいけません。

今の仕事をしていく上での喜びと、逆に難しい点は?

担当になってから、プライベートを含め何度もカンボジアを訪れていますが、そのたびに新しい発見があり刺激になっています。離れた場所にいる知り合いに知らせたいことがある時、日本なら電話かメールで済ませますが、現地では同じ方向に赴く人に伝言を頼みます。日本でも昔は行われていたようなことですが、便利な暮らしに慣れた今となっては新鮮に感じられます。また、カンボジアの場合、一応法律はありますが法治国家として日本のようには機能していません。例えば賄賂が日常的に横行しています。警察官自身が薄給のため賄賂なしでは生活ができないのですから、きちんと取り締りが行われるはずもありません。

学校の先生の場合は、授業をサボってアルバイトに出かけるのが日常茶飯事になっています。これも生活が苦しいためです。社会規範が成立するためには、それなりの生活を整備する必要があるわけで、その点で「日本は有難いなぁ。」と改めて思ったりもします。これら現地のことを、塾生をはじめたくさんの人にできるだけ伝えたいと思うのですが、「かわいそうな人たちとそれを助ける私たち」というステレオタイプ的な先入観を持たれてしまいがちでジレンマを覚えます。そこが最も難しい点でしょうか。実際は私たちの方にも十分に彼らから得るものがありますから。

今の仕事を始めてから体験した印象的なエピソードはありますか?

2001年より、河合塾で使っていた机や椅子をはじめとする教育関連物資をカンボジアの農村部にある学校に寄贈しています。中古でもあちらではまだまだ立派に活用されます。現在までに私たちが贈った物資を利用している学校は60を数えますが、河合塾の塾生が書いた机のいたずら書きを、現地の生徒が面白そうに眺める微笑ましい光景も見られます。また、2002年からカンボジアの学生を招いて同じ年頃の日本の学生と交流するプロジェクトを始めました。最初に実施した年、帰国を前にしたカンボジアの3人の高校生に、彼らと仲良くなっていた日本の学生が、「ケータイのメールアドレス教えて!」と言っていました(笑)。

カンボジアでは郵便システムも確立されておらず、住所を書いて送っても、大きな町の集配所までしか届きません。こうしたことも元をたどればやはり戦争で破壊され尽くしてしまったのが原因なのですが、便利で豊かな時代に生まれた日本の若い人たちには、ここまでの生活の違いは実感しにくいですよね。ただ、仕事柄日々若い世代と接していて感じるのは、彼らは社会問題に対し決して鈍感ではないということです。確かに関心の有無が二極化していることは否めませんが、ボランティアに対する意識などは、私たちの世代よりむしろずっと高いように思います。

担当者になってから、自分の意識や生活の中で変わったことはありますか?

カンボジアを知ることで、世界の違う部分が見えるようになりました。イラクのこともアフガニスタンのことも、以前とは別の見方をするようになりました。

きっかけになったのはカンボジアですから、カンボジアとの出会いは大きかったですね。TVのニュースが伝えないものを考えるようになりました。

社会に伝えたいメッセージをどうぞ!

自分のできる範囲のことを始めることです。典型的なのが選挙ですね。たかが一票で何が変わるのかという気になりますが、行かないことにはそれこそ何も始まらない。

考えてみる、うったえてみる、やってみる、そんなひとりひとりの小さな努力の積み重ねこそが、社会を変える力になるのです。

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