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河田聡史

vol.33


PROFILE

コスモ石油株式会社
企画一部 CSR・環境推進室 担当室長

現在の会社での経歴

1989年入社。財務部、アブダビ事務所、秘書室を経て、2001年より環境室兼務。04年よりCSR・環境推進室兼務。その他、財務部とアブダビ事務所の職歴の間に休職制度を使い、青年海外協力隊でソロモン諸島に2年間滞在。現在、会長兼社長の政策秘書としての業務の一方で、エコカード基金の環境貢献活動、CSR推進に向けた企画などを担当。

家族構成

妻、男の子(小3)

趣味

アウトドア(キャンプ、ダイビング)

好きな国or行ってみたい国

オーストラリア(のんびりしたところが好き)

影響を受けた人、尊敬する人、目標にする人

現在、ソロモン諸島で州知事をしているルーベン・モーリー氏。自分のエリート階級のキャリアを捨て、村おこしを率先して行なう生き様に共感している。

一番大事にしているもの

家族、友人


河田さんが描く、理想的な社会とはどんな社会ですか?

環境負荷を抑えながら、成長できる社会です。現実には良好な地球環境へのニーズが高まる一方で、豊かさや利便性へのニーズも決して低下していません。基本的にトレードオフの関係にある二つのニーズを同時に満たしていくためには、技術革新と価値観の転換という二つのアプローチが必要だと思います。東京大学の小宮山教授によれば今後30年ぐらいの間に技術革新によってエネルギー効率を3倍程度に引き上げることは現実的に十分可能だとのことですが、一方で人口増加などの影響でエネルギー需要も3倍程度に増加する見込みです。

言い換えれば、どんなに技術革新が進んでも現在のエネルギー需要、環境負荷は横ばい以下にはならないということ。現在の環境負荷は持続可能なペースをすでに上回っている。現在の水準以下に環境負荷を引き下げ、持続可能な社会を実現するためには、技術だけに頼らず、価値観の転換を通じて社会のあり方、ライフスタイルそのものを変えていく必要があることは明らかだと思います。

どうすれば、この理想的な社会を築けると思いますか?

日本国内では環境問題はもとより、治安の悪化、青少年の学力低下、犯罪年齢の若年齢化、高齢者介護などなど問題を数え上げればきりがありません。各々の問題に共通した誘因として指摘できるのは、地域社会のつながりが希薄化していること、だと思います。経済成長の過程で核家族化が進み、“個の時代”といわれるほどに家族が細分化し、一人暮らしの世帯数も増えました。大都市では隣人のことすらよくわからない、が当たり前になっている。濃密な地域社会は、少し息苦しさを覚えるなどのディメリットもありますが、お互いが困ったときに助け合える社会というのは、子育てやお年よりの介護などで強い安全弁を持っています。青少年の若さゆえの暴走や外部者の犯罪抑止などにも効力があるでしょう。

地域社会の結束を高めるためには、そこに住む人たちが長時間そこで実際に過ごしているということが一番大切です。早朝に家を出て深夜に帰宅する一人暮らしの人たちばかりでは、地域社会は活性化しません。多くの家族が一つの屋根の下で生活し、働き手が少しでも長く家庭で過ごせるための外部環境整備を進める上で、国や自治体そして個々の企業の役割りは大きいでしょう。大きな政策の枠組みの中で地方を活性化し、職住接近を進めれば結果として地域社会は活性化するのではないかと思います。環境問題の視点でも地域社会活性化の前提となる大きな家族はメリットがあります。家族が寄り合って生活するだけで、エネルギー消費やゴミの量は減少するからです。

今の仕事をしていく上での喜びと、逆に難しい点は?

石油会社の使命は、社会の繁栄と安定を支えるエネルギーの供給にあります。その使命を全うするためにはエネルギー消費の重大な制約要因として浮上してきた環境問題に対し、真剣にかつ自分たち自身の問題として取り組まざるを得ません。

エネルギーと環境を同時に考えなくてはいけないという意味では、社会全体が抱えるジレンマの最前線に我々はいるのではないかと感じます。我々に与えられたミッションはとても困難ですが、同時にやりがいを感じることも多々あります。

今の仕事を始めてから体験した印象的なエピソードはありますか?

10年程前、会社を休職して青年海外協力隊に参加したときに感じたことは、支援を必要とする途上国の現場と支援の意思と能力を有する人たちをつなぐ機能が社会全体に欠落しているのではないか、ということです。途上国で実際の支援活動に携わっている人たちは、現実に何が起こりどのような支援が有効なのかよく理解しています。しかし、たいていのボランティアやNPOにはその情報を発信し、世の中の多くの支援者に届けるだけの資金力や影響力を持ち合わせていません。一方、先進国に住み途上国を支援する資金や影響力をもつ人たちは、その意思や意欲をもちながらも実際にどこにどのような支援をすべきかがわからず躊躇し、立ち止まっています。

今、私が携わっている仕事は、支援を必要とする現場と支援者をつなぐことだと思っています。ひとつの企業でなしうる最大の社会貢献活動はこの社会のパイプ役を務めることであり、そのためにも双方の立場の方々とコミュニケーションを深めていかなければいけないと思っています。10年間ずっとあたためてきたことを今、ささやかではありますが実行に移しつつあることに喜びと責任を感じます。

社会がこうしたらもっと良くなる、というアイデアはありますか?

先程も申し上げましたが、社会を構成する最小組織である家族がもっと大きくなり、地域社会が活性化すれば、価値観やライフスタイルなどさまざまなことが変化し、結果として社会のありようそのものが変わってくるのではないかと思います。

地域社会の活性化を促すための取り組みを政府、自治体、企業、あるいは地域社会自身がそれぞれの立場ですすめていけば、きっと世の中は変わると思います。

担当者になってから、自分の意識や生活の中で変わったことはありますか?

特別に変わったことはありません。やりたかったことをやっているので、やりがいを感じています。

社会に伝えたいメッセージをどうぞ!

石油会社が環境のことを語るとよくお叱りを受けます。「石油会社が事業を止めるのが先決だ」「偽善行為だ」「そんな暇があったらガソリンの値段を下げろ」などなど。厳しいご批判を受けるとドキッとしますね。もう慣れましたけど。(笑)先日、環境をテーマにしたあるシンポジウムに出席し、パネルディスカッションを聞いていました。終了後、質疑応答の時間に会場から一人の質問者が立ち上がり、こう質問しました。「パネラー一人一人にお聞きしたい。今日この会場にどうやって来ましたか?車ですか?電車ですか?」パネラーとして5〜6名の著名人がいましたが、皆さん電車で来たと答えられて、質問者も「それなら結構です」と言って終わりました。真偽の程はともかく「車で来た」と答えた人と質問者のやり取りを聞いてみたかったですね。私は環境のことを真剣に考えている人が車に乗ってもいいと思います。

環境保全と同じかそれ以上に自由で選択肢の多い社会を守ることは大切だと思うからです。環境保全のことだけ考えれば、自家用車の使用を制限したり、高額の税金をかけるなど手段はいくらでもあります。ある日ある時、電車じゃなくて車に乗りたいという理由はなにも立派な理由である必要はないと私は思います。体調が悪い、天気が悪い、急いでいる、気分が乗らない・・・様々な理由があっていいと思います。社会の色々な人たちが自発的に環境保全に取り組み、結果として、極端な制限をせず、個人の様々な選択肢を残したままで社会の持続性が保たれるというのが理想です。そのためにこそ、今、個人が意識改革をおこない、あくまで自発的にそれぞれの立場でそれぞれにできることに取り組むことが大切だと思います。石油会社もいろいろと試行錯誤をしていますが、おおらかな目で見守っていただきたいなあと思います。(笑)

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