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和田孝一

vol.18


PROFILE

ホテルニューオータニ
社長室アドバイザー 兼
エヌアールイーハピネス株式会社 顧問

現在の会社での経歴

中学卒業後フランス料理を学び、1964年ホテルニューオータニ入社、74年にレストランニューオータニ総料理長に就任。78年より技術企画課の課長、ファシリティーマネージメント部の部長として環境対策に着手。2000年ホテルニューオータニの環境事業を手がけるエヌアールイーハピネス蠕瀘と同時に同社代表取締役社長就任。現在は同社顧問兼バイオテクノロジー研究室室長を親会社の社長室アドバイザーと兼任している。経済産業省資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会臨時委員も勤め精力的に活動中。

家族構成

妻と子ども二人(二人とも男の子)

趣味

ハイキング

好きな国or行ってみたい国

スイス

影響を受けた人、尊敬する人、目標にする人

ニューオータニの環境活動の良き理解者でもあるレスター・R・ブラウン

一番大事にしているもの

家族


和田さんが描く、理想的な社会とはどんな社会ですか?

エネルギーと廃棄物の両方がうまくカスケード使用されていく循環型社会です。ホテルニューオータニはモデルケースとして参考にしてもらえると思います。私たちの環境対策には30年以上の長い歴史があります。思い切った設備投資も必要でしたが、結果的に大きなコスト削減という、企業に必要な実利的リターンを生みました。エネルギーと食品廃棄物のリサイクルシステムの成功例として、現在全国15もの大学が研究の題材にしています。

それほど注目されている理由は、何よりこれは机上の話ではなく実例だからです。ホテルニューオータニは言ってみればコミュニティなんですよ。一日の利用者が15,000人を超え、1,600の客室、30以上のレストランや宴会場、200社にのぼるテナントを抱えています。これが24時間稼動しているのですから、街そのものみたいなものです。そのまま本物の街に置き換えて考えると、ものすごい可能性があるはずです。

どうすれば、この理想的な社会を築けると思いますか?

ニューオータニのケースは、良いモデルになると思いますが、この問題は一社あるいは一業界の成功例を作って解決することではありません。点と点をつなぎ、面にしていかなくてはならないのです。行政、企業、大学などの研究機関、それから農家も連携して、面の動きを創出していく必要があります。日本でもわずか5年の間に法整備が一気に進みました。それにともない企業の姿勢も大きく変わり、技術開発も進歩しました。長く携わってきた経験上わかるのですが、日本における環境への取り組みは、ここ数年で劇的に前進しました。また、近年ニューオータニモデルについて海外からの問い合わせと相談が目立ってきています。この問題には国境はありません。日本の自給率は飼料がおおよそ20%、食料が40%という世界でも例がないほどの低さです。

この数字の意味するところはつまり、よその国では食料生産のために水を使い土を痩せさせていますが、食品廃棄物は、食料を大量に輸入し消費している日本に全て集まっているということです。これは食料以外のものにも当てはまりますよね。ですから、一国だけで考えるには限界があるのです。ただ、これは政策論ですから、考えるのは行政側の仕事ですね。私たち企業に必要なのは政策論ではなく具体論です。足元の話を積み上げていく具体論がないと事業などできません。小さなことを試行錯誤しながらも粘り強く積み上げて、将来の大きな動きにするのです。そもそも以前に比べると、こういったことにずっと聞く耳をもってもらえるようになりました。大きく動いてきたと実感しています。ですから私は将来にも明るい期待を見出しています。

今の仕事をしていく上での喜びと、逆に難しい点は?

「貢献」という言葉が自分の中でキーワードになっています。もっとも以前はこの言葉を信用していなかったのです。人間は私利私欲の生き物だから、貢献などというものはありえないと考えていました。ところがさんざん苦労してやってきてわかったのは、逆に私利私欲ではできないことばかりだということでした。自分から何かを提供しないと何も得られない、皆で心を一つにして汗水たらさないと何も動かない、結局必要なのは信頼関係だと素直に思えるようになりましたね。これは喜びと言えると思います。難しいことはたくさんありますが、特に食品廃棄物のリサイクルで苦労しています。エネルギーのカスケードユースは、うまくやれば一つの会社の中だけでも完結するのですが、廃棄物はそうはいきません。私たちは費用をかけて食品残渣を飼料・肥料化し販売していますが、食品リサイクルのエンドユーザーである農家にとって農業はビジネスですから、品質、コストなどあらゆる面で彼らが満足しないと売れません。

売れないことでリサイクルが破綻してしまわないように、ありとあらゆる知恵と工夫が必要なのです。例えば豚の飼料として使用した場合、食品残渣は脂肪分が多いことから、それを食べて育った豚の肉は軟脂してしまい、商品として良い値がつかなくなります。これを防ぐためには飼料に乳酸菌などを加えれば良いとわかりましたが、このような研究開発も必要なのです。ホテルの人間がそんなことまでしているのかと驚かれますが、しているのです。(笑)食品リサイクルの成功例は少なくないとはいえ、ほとんどが製造過程に発生した単一の食品廃棄物からのリサイクルです。想像に難くないと思いますが、一度テーブルにのった食品のリサイクルはそれと比較するまでもなく複雑で難しいのです。

今の仕事を始めてから体験した印象的なエピソードはありますか?

ある小学校の4年生のクラスに呼ばれてレクチャーをしたことがありましたが、その時の子どもたちのレベルの高さには驚嘆しました。CO2の質問も出ましたから。その後全員に感想文をもらって更に驚き、感動をおぼえました。

小学生だと思って侮ってはいけません!あれは先生の努力の賜物ですね。教育の大切さを痛感しました。あの先生のように熱心な人がどんどん火をつけてくれれば、必ず良くなると思いました。

社会がこうしたらもっと良くなる、というアイデアはありますか?

先ほども言いましたが、一番重要なのは教育だと確信しています。ニューオータニにはテナントを合わせると約3,000人のスタッフがいますから、分別ひとつとっても全員に徹底してもらうのは大変です。私たちが行っている効果的な試みのひとつに、新人研修での農家訪問があります。自分たちの働くホテルから出た食品残渣を肥料に利用している農家で、つくっている野菜を食べてみるというプログラムです。

現代人には「古いものより新しいものが優れている。何でもお金を出して新しく買えば良い。」という価値観が染み付いています。ましてや若い層はものを大事にする文化など知らずに育ってきているのです。ですから、頭でわかるだけではなく、実感してもらう。廃棄物を有効利用して、安全で、こんなに美味しいものができるのだとわかってもらうのです。私はそこまでを教育だと思っています。

担当者になってから、自分の意識や生活の中で変わったことはありますか?

年数との戦いを意識するようになりましたねぇ。(笑)この分野で挑戦したいことがまだまだあるわけですよ。しかし例えばリサイクル肥料を使ったイチゴを実験栽培したとしますよね。美味しいイチゴがたくさんできるかどうか、結果をみるのは簡単な感じがしますが、相手は植物です。

3年あってもイチゴの季節はたった3度しか回ってこないわけです。1度の失敗から再挑戦まで1年待たなければならない。環境の仕事は何でもとかく試行錯誤に時間がかかります。自分の年齢はそれを待ってくれませんし、どうしようかと思いますよ。(笑)

社会に伝えたいメッセージをどうぞ!

絶対に諦めないことです。根気が大事です。シンプルな言葉ですが「継続は力なり」ですね。環境問題はあまりにテーマが大きいので、知れば知るほどその途方のなさに無力感を感じやる気を失いそうになります。実際にそれでやめてしまう人も大勢います。

私とて何度そんな気持ちになったか知れません。しかしコツコツ続けていくと見えてくるものがあるんですよ。そして確実に動き出すこともある。それには、楽しむことです。決して諦めず、楽しんでやりましょう。

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