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萩原芳男

vol.13


PROFILE

ネスレジャパングループ
工務部 工務サービス課 課長
NEMS(ネスレ環境マネージメントシステム)委員会事務局長

現在の会社での経歴

入社30年。エンジニアリング部署に所属し国内2工場、海外赴任(スイス、フィリピン)を経て現在の神戸本社に。本社で震災を経験する。現職では予算管理等の工務サービス業務とNEMS(ネスレ環境マネージメントシステム)委員会事務局長として環境活動を担当するほか震災の経験を活かし、安全活動にも携わる。

家族構成

妻、長男・長女(共に大学生)

趣味

農作業、ガーデニング、ペットの猫とうさぎの観察

好きな国or行ってみたい国

赴任したことがあり友人もいるスイス、フィリピンと、最近気になるのは日本人の起源と言われているモンゴル

影響を受けた人、尊敬する人、目標にする人

影響を受けたのは、両親、上司、スイスとフィリピンの友人

一番大事にしているもの

家族(ペットを含む。)


萩原さんが描く、理想的な社会とはどんな社会ですか?

まずは世界中が平和であることです。地球が一つの国家のように機能して、人口問題を含めた地球環境問題を全世界が共通の課題として取り組める仕組みが定着し、経済、資源、文化、民族、宗教などが融合・調和している、そんな平和な社会が私の描く理想的で持続可能な社会です。平和であるためには、貧富の差はある程度に抑えなくてはいけないはずだと思います。富の分配をしていく必要があるでしょうね。地球の資源も限界がわかってきているのですから、自由主義だからといって何もかも自由で好き放題するのではなく、我慢することは我慢しないといけないのです。

京都議定書の例のように、国やグループ単位で考えると、各々の利害を考えて反対したり駆け引きしたりしてしまいます。各個人やグループが自己中心的な考えや行動をしていくと、間違いなく地球の自然も人間も衰退していきます。より大きな集団の中で協調的判断と短期的・短絡的にならないように遠くを見据えた価値判断をして、その長期的目標に向かって方向を見失うことなく進むこと、すべての人が同じ地球社会の構成員として地球の存続を考え共通の課題に取り組むことが大切です。そうであれば一人一人も我慢するところはできるだろうし、努力もできると思います。

どうすれば、この理想的な社会を築けると思いますか?

第一に情報を持たなくてはいけない。情報が細部にまでもたらされているかというと、世界にはそうではない所がいっぱいあります。例えば地球環境問題でいうと、この先どうなっていくのかが客観的データをもって予測されていますので、誰もが危機的状況を知らなくてはならない。国の一部の人間が勝手に決断できることではありませんが、そもそも情報を持っていないから判断ができない人が大勢います。現状がどうなのかを隅々まで知らせないことには、彼らは同じ土俵に上がれないのです。IT化が進み、情報自体は得やすい世の中になってきているので、それを駆使し、本当の意味で、世界中で情報を共有しなければいけません。これに関連して、ネスレで取り組んでいることがあります。

今後食料の供給量が限界に達してきて、世界中の人には行き渡らなくなるという問題に対し、Sustainable Agriculture Initiativeというプラットフォームを、ダノンさんとユニリーバさん、ネスレの3社で立ち上げました。Sustainable な農業を確立するための啓蒙活動と技術の共有を目的にし、生産者、商社、メーカー、小売業者、消費者、行政関係者、NPOなどステークホルダーを全てを巻き込んで、国を越え、競合とも手をつないで、取り組んでいこうというものです。「急激な変化を作らない」というのがネスレのポリシーです。事業を行っていく以上は、共存していかないといけない。株価を気にして短期的な利益を上げることに注力せず、周りを崩さず、ハーモニーの中で、長期的に持続可能な成長をしていくということを企業として公言しています。

今の仕事を始めてから体験した印象的なエピソードはありますか?

霞ヶ浦工場ではキットカットを作っていますが、焼き上げたウエハー部分を四角く切るときに、食パンの耳のように切り落とされた部分が発生し、廃棄物化します。これを食品リサイクルで養豚場に飼料として回してきましたが、最近工場の近くにダチョウ牧場ができたので、ダチョウの餌としての活用も検討中です。ダチョウは非常に環境負荷の低い食品で、昨今の食肉不安の中、第4の食肉となりうると日本でも脚光を浴びつつあります。食品リサイクルは良いことですから、積極的に進めたいと思います。

また、島田工場では、工場長を含めた社員全員を対象に、環境意識度調査をテスト形式で実施しています。教育は大切ですからね。面白いのは、結果(点数)を公表していることです。上司よりも部下の方が点数が良い時もそれが皆にわかってしまうんです。指導的立場の人にとっては非常に緊張感のある取り組みですよね。しかし、誰でも点数が良いと嬉しいものですし、意外に楽しんでやっているようです。

今の仕事をしていく上での喜びと、逆に難しい点は?

今の仕事では社内外を問わず人とのコミュニケーションの機会が増えました。その中で様々な考え方や価値観に出会える喜びがあります。私はエンジニアだからか、以前は価値観がちょっとハードな感じだった気がしますね。理屈とか数字とかで割り切るところがありました。この仕事を任されるようになってから、人の心を動かすとか行動を変えることは難しいことで、そのために必要なのは相手をよく理解することだというのが改めてよくわかりました。より心を使うことで人間的には少し大きくなれたように思います。社内全体に新しい環境マネジメントシステムを構築するためには、いろいろな人の理解と協力が必要で、それらを調整し、ベクトルを合わせていかなくてはいけません。

難しいことではありますが、システムが機能すると、達成感や自信が湧きます。ただ、いつも上手くいくわけではありません。新しいシステムを取り入れなくてはいけない時、既存のシステムに調和させられるものなら良いですが、更に付け加える形で取り入れるのにはやはり抵抗があります。皆既に忙しいわけですから。しかしそれでも組織や人を納得させ、動かすために、こちらの知識や理解の基礎があるかどうかが問われるわけです。いろいろ勉強して努力をしているつもりですが、教科書には書いていないものが環境のことにはたくさんありますから、経験不足が原因で、私自身の理解が及ばないこともあります。

今の仕事に携わるようになってから、自分の意識や生活の中で変わったことはありますか?

家族には老化現象と言われていまして、それも含まれるとは思いますが(笑)、大きく言えば人生観、世界観まで変わりました。多くの人はそうだとは思うのですが、以前は、自分とか家族、友達など自分に近いところが幸せになるように考えていました。そこが幸せになっていることで不幸になっている人が存在するということを考えなかったんですね。今は、もしそうであるなら我慢しよう、などとバランスを考えるようになりました。それと、趣味が農作業やガーデニングに傾いていきました。そして、自然があるから自分がここにいられるということが実感としてわかるようになりました。

以前は頭ではわかっているつもりでも、自然が自分に関わりがあることを意識したことがなかったのですが、今は、木や水や小さな虫までも、自分にとって非常に大事なものと思えて、皆が幸せになることが自分の幸せだと信じるようになりました。同時に将来のことも真面目に考えるようになり、今現在の会社や自分自身の考え方と行動が、地球の未来にとって本当に良いことなのかを意識するようになったのです。ですから、次世代のために今何をすべきですべきではないのかが非常に気になります。

社会がこうしたらもっと良くなる、というアイデアはありますか?

私自身は、人間は良い方向に向かっていくだろうと思っています。なぜなら人間も地球に生きる生物のひとつですから、“種の保存”という本能を持っているはずで、自らが絶滅の道を歩んでしまうことはありえないと信じるからです。少なくとも人類が衰退しないような行動をとっていくだろうという自信を持ちながら、ではどうすべきかを考えています。危険なのは、自然の生き物としての本能が欲望にかられた理性の陰で埋もれていくことです。人間が科学の進歩に踊らされることなく、本来の姿を取り戻すことが重要です。つまり、表面上、数字上の環境対策だけでなく、本質的な人間内部の環境意識対策にも取り組まなくてはならないはずです。持続可能な社会をつくるためには、法律や目標設定による枠組みも大事ですが、人間一人一人の内面にも注目して、私たちの本来あるべき姿を問い、考え直して近づいていく努力も必要だと思います。

この、本能をうまく呼び覚まして軌道に乗せていくという仕事が政府や指導的立場にある人たちの役目だと思いますね。教育、啓蒙活動の長期目標を立てて、国家的・国際的事業としてしっかり取り組むべきです。最終的には一人一人のライフスタイルですよね。日本に限って言うと、使い捨てのもので溢れる生活を変えないと。ライフスタイルを変えることで幸せになるということを社会が仕組んでいくことが必要です。これを実践するには学校教育や、マスコミ・企業の活動が大きく関わってきます。大人と子どもが一体となって、社会全体が人類の存続を真剣に考えることができる環境づくりをしていくには、特に女性の力が求められてくると思います。

社会に伝えたいメッセージをどうぞ!

ネスレが世界共通的に環境のキーワードにしているのが、『星の王子様』の作者サン=テクジュペリの言葉です。それをメッセージに代えたいと思います。

「私たちは先祖から地球を受け継いでいるのではなく、子孫から地球を預かっているのです。」

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