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北川成人

vol.12


PROFILE

大成建設株式会社
社会交流センター センター長

現在の会社での経歴

80年代のほとんどを、インドネシアやミャンマーの事務部門のマネージャーとして現地スタッフに囲まれて過ごす。その後本社の給与室長などの総務畑を歩み、現職の社会貢献を担当する部署に現在3年半。職務の中心はメセナ活動としてのル・コルビュジエのギャラリー運営。

家族構成

妻、子ども二人(長男は就職していて次男は大学生)

趣味

美術鑑賞(現代美術)。ウォーキングなどの身体づくりも。

好きな国or行ってみたい国

カナダ(カナディアンロッキー)

影響を受けた人、尊敬する人、目標にする人

たくさんいるが、一人挙げるなら福沢諭吉

一番大事にしているもの

(妻には大事にしていないと怒られそうだが)家族


北川さんが描く、理想的な社会とはどんな社会ですか?

理想的な社会とは、社会の中で、ひとりひとりが自己の能力をフルに発揮し、他者から敬意を得ることのできる社会だと思います。つまり、自己実現ができる社会ですね。今の人は、基本的に「自由」だと言われていますが、結局は管理された社会ですし、世界的には、満足に食事もできない人が数多く存在するわけですよね。

私も実践できていないから恥ずかしくて言えたものではありませんが、自己実現ができる社会を作るには、他人への愛とか思いやりがやはり重要なのではないかと考えています。

どうすれば、この理想的な社会を築けると思いますか?

もうGDPがゼロ成長で良いと、私は思ってますね。この思想は企業人としては駄目な考え方ですが、既にいろんなところで言われてきていることでもあります。経済新聞を30年も読んでると頭がおかしくなりますよ。持続可能な発展とか社会とかいう一方で、ひたすら前年対比何パーセントやら株価がどうしたとか、結局まだそれが価値観のすべてですよね。従業員を何人切っても業績が上がれば賞賛され、かつてエクセレント経営者と謳われた人も、前年対比でマイナス成長なら途端に駄目でしょ。マイナス成長でも、その間、もしかしたら社会貢献という側面ではしっかりと継続していたかもしれませんよね。特に日本人は、経済成長のことを気にしすぎですよ。僕はインドネシアに赴任していたことがありますが、そういった価値観と、人々の幸せとは、比例しないことが多いということを実感しましたね。そんなに給料ももらっていない運転手が5時になると悠然と家路を歩いている。本当に堂々としたものなんですよ。その姿を見ていたら、私たち日本人は何か間違っているんじゃないかと思いましたね。

確かに収入は彼らよりはるかに多いですが、それを得るために夜中まで働いていたり、日々数字を追いかけている。インドネシアは階級社会ですが、それ自体の良し悪しは別にして、実際、階級が下の人がみんな卑屈になっているということもないし、むしろ私たち日本人の方が物質的な豊かさに追い立てられていて余裕がないように感じました。逆にいうと、日本人は戦後それほどまでに貧しかったのかと、改めて考えさせられもしました。当時の私は、マネージャーとして現地スタッフの上に立ちながら、同時に日本人であるということでマイノリティーでもあったんですね。そんな特殊ともいえる立場にあった経験が、いろいろなものの見方を教えてくれたように思います。そうですね、今日は企業人としてではなく、個人的に発言して良いのですよね?私個人としては、右肩上がりであるべきだ、ということ自体に懐疑的にならなくてはいけないと思っています。

今の仕事を始めてから体験した印象的なエピソードはありますか?

大成のホームページの中で、自分でコルビュジエについて書いて発信していますが、細かく読んでくださっている方もいるんですね。僕としてはちょっと面白い雑文を書いているつもりだったのですが、「あなたはこう言っていますが、これはどんな文献に記載があったことですか。」というメールを送ってきた方がいらっしゃいました。

その後何度かのやり取りでフランスに留学中でこういったことを専門に勉強している方だとわかったのですが、そこまでちゃんと読んでくれているんだと思うと嬉しかったですよ。

社会が、こうしたらもっと良くなるというアイディアはありますか?

お金持ちはみんな大っぴらに寄付すればいいんですよ。そういった人たちは特別な才能なりを与えられているわけですから、それを自己実現の表明として社会に還元する。また、世間もそれを売名だとか何とか斜に見るんじゃなくてね、成功者の証として賞賛するんですよ。

アメリカなんかじゃみんなやってますよね。日本にだって大金持ちはたくさんいますよ。もちろん、企業もそうです。みんなもっと寄付をすればいいんです。

今の仕事に携わるようになってから、自分の意識や生活の中で変わったことはありますか?

やっぱり、環境問題だとか社会貢献だとか、以前より考えるようになりましたね。さっき、話した理想的な社会というのには矛盾するんですが、いろんなセミナーに参加すると、良い社会をつくるためには、必ず、市民とか地域、コミュニティーがキーワードになるでしょ。でも、それって実際に存在しますか?少なくとも都会ではほとんどないですよね。いわゆるご近所付き合いはしていませんし、地域の人たちと一緒に何かする機会もない。

だからといって不便も感じないでしょ。かえって気楽だったりして。私も本音を言うと、家に帰ってまで地域の人たちとコミュニケーションを図るなんて、うっとうしかったりします。私でもそう思うくらいですから、若い世代の人はどうかって話ですよ。だから実際には難しいですよね。けれど、そういったこと自体、以前は考えなかったことですが、この仕事に携わるようになって、考えるようになりました。

社会に伝えたいメッセージをどうぞ!

輸入思想だからなかなか理解されないと思いますが、昨今ではCSRとsustainable developmentという言葉が日本でも盛んに使われています。企業の社会貢献とか社会的責任は日本でもずっと以前から言われてきたことです。しかし、今のCRSが大きく違うのは、環境からのアプローチの点でしょう。自然人としての市民というのは絶対的な自由をもっていて、その絶対的自由を追求すると他人の利益も最大限に生まれる、この思想の基に私たちは19世紀から進んできました。そして、環境が有限だと言う壁にぶつかったわけです。個人の自由の絶対性、無限性と環境の有限性とがぶつかるところでの妥協点がsustainable developmentということですよ。

これが企業になると、企業ですから絶えず発展していかなくてはならない一方で、有限である環境と折り合いをつけていかなくてはならないことになります。そこを維持していくためのアイテムとしてCSRがあるのだと私は思います。CSR先進国とされてきたアメリカでさえ、エンロン事件が起きていますから、よほど厳しくやっていかなくてはいけませんよね。しかし、コンプライアンスとか、あるいはグリーン商品を作って売るとか、CO2を削減することだけではなくて、私たちが、まずは今の、今までの、価値観を疑うところから始める必要があると思いますね。

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