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天川秀喜

vol.11


PROFILE

セイコーインスツルメンツ株式会社
技術本部 環境経営推進グループ専門部長
CEAR登録環境主任審査員(A0627)環境省登録環境カウンセラー

現在の会社での経歴

入社以来時計・プリンタ等の新製品の生産技術開発を25年間担当し、1993年より現職である環境保全活動の企画・推進に携わる。同時に環境ISO14001主任審査員でもある。

家族構成

妻、長男(会社員)

趣味

ヨット(ディンギー)が一番の趣味。その他芸術鑑賞と家庭菜園(近年はゴーヤ)

好きな国or行ってみたい国

イタリア、オーストリア、ドイツ、フランス、イギリス、スペイン

影響を受けた人、尊敬する人、目標にする人

母親や小学校の先生、高校時代の友人などの身近な人物のほか、中坊公平、司馬遼太郎、モーツアルトやバッハ、シュバイツアー博士など数多く思い浮かぶ。

一番大事にしているもの

家族、思いやり、感受性などのお金では買えないもの


天川さんが描く、理想的な社会とはどんな社会ですか?

地球上どこでも戦争がない、飢えもいじめもない、健康で安心して暮らせる社会。日本で言うと、世界から尊敬される環境立国。ただ実現は人間は生まれながらに欲望や自由を持っていますからね、複雑でとても難しいです。科学者が因果関係を明確にすれば危機感があるんでしょうけどね。環境問題は、温暖化で海面が数センチ上がったとか言われても、実感がわかないじゃないですか。寒いところの人なんて近年暖かくなったって喜んでいるかもしれないくらいですよ。それを、例えば最近の感染症、SARSとか鶏インフルエンザが温暖化と関連があると判明したとしたら、意識は変わりますよね。

フロン問題も、オゾンホールができて皮膚がんになるとわかったら急に関心が高まったでしょ。人間はそういうものですよね。人は長く生きることで多少おりこうさんになりますが、残念ながら、人生の中で得てきたものをDNAで伝えることができません。生まれたばかりの子どもは、何も受け継いでいません。そこで教育が大事になるんでしょうね。・・・それにしても、私たちは一生懸命働いてきたのに、嫌な世の中になってしまいました。子どもの虐待、中高年の自殺・・・、どうしてこうなってしまったのでしょう。すさんで生きにくい社会です。

どうすれば、この理想的な社会を築けると思いますか?

現代は例えてみると、精神的にもCO2問題が深刻化している状態ですね。みんな酸欠で息苦しくイライラしています。最近ではスローライフという言葉が頻繁に登場しますが、人間は本来ゆったりとした時間軸の中で幸せを感じていくものなのでしょうね。ただ経済活動はそれを待ってはくれません。この矛盾は、環境問題とも根っこではつながっていますよね。こういうことを考えると、私も将来にはどうしたって悲観的になってしまいます。ただ、悲観的になってばかりでは大人の責任を果たせませんから、悲観論に裏打ちされた楽観論を語っていかなくてはなりません。そこで三位一体式解決策から持続可能な社会を考えています。ここでの三位一体とは、一つ目に心、二つ目に体制(しくみ)、三つ目に知識です。「心」とは、生き方として、もったいないの精神や、ゆとり、うるおい。「体制(しくみ)」とは環境に良いことをすると経済的にも得をする制度と皆が参加しやすい制度です。そして「知識」とは歴史や先人からの知恵、地球と人類が抱えている生存危機的状況の認知です。環境問題の解決策としてエコプロダクツをどんどん売ってゆくのは良いことですが、良い製品が需要を喚起して、例えば電化製品なんかも皆が買い替えてたくさん使うようになれば、結局は同じように環境負荷がかかりますよね。

さっきも言いましたが、人間には欲望がありますから、便利な新しいものが欲しいんです。だから、「環境効率」(※分母が環境負荷、分子が機能で指標が割り出せる)の向上だけでは難しいんですよ。そこで私が考えたのが「幸せ効率」です。「天川の幸せ効率」と名づけました。(笑)これは三位一体の「心」の部分に当たりますが、分母にお金(物質)、分子に満足感がきます。この二つ(環境効率と幸せ効率)は響き合いませんか?私の趣味のディンギーヨットは、大変効率が良いですよ。風を受けて走るだけで燃料が要らないので、環境にやさしく経済的で、そしてもちろん楽しくもあります。国で言うと、モンゴルの効率が良いんです。彼ら遊牧民は物が少ないですから。そう考えると、やっぱり日本は悪いですねぇ。やはり「知足」ですよね。足るを知る。余談ですが、お友達を選ぶときには、幸せ効率が自分と近い人にした方が良いですよ。

今の仕事を始めてから体験した印象的なエピソードはありますか?

日本の環境問題の原点は水俣病といわれていますが、水俣病患者と向き合ってきた熊本大学医学部の原田正純助教授(当時)の真摯さには胸を打たれました。私たちが環境問題に目覚めるに至るまでには多くの犠牲を払っています。苦しんだ人がたくさんいたことを忘れてはいけないですよね。原田先生は本当に真剣でしたし、親身になって、一緒に悩んでおられました。その姿には日本のシュバイツアーを見る思いがしました。それから、私は環境ISO14001の主任審査員として月に一回程度他社の認証審査を行なっていますが、取得を内示された時の担当者の喜びようはすごいですよ。

ご苦労されていますからね。感激で涙される方もいるくらいです。こっちももらい泣きしちゃいますよ。面白いところでは、専門学校でレクチャーをした時に、寝ている学生がいたのですが、「環境には実は資格がたくさんあって役に立つんですよ。」といったようなことを口にしたとたん、そういった学生もパッと反応するんですよ。なかなか現金なものです。資格イコール就職に有利!ですから。(笑)

今の仕事をしていく上での喜びと、逆に難しい点は?

様々な場所でレクチャーする機会がありますが、相手に伝わったと思える瞬間が嬉しいですね。最初は難しくてわからない、興味もない、なんて態度だった方が、3ヵ月後には自分から環境の話をするのに接すると、大変嬉しいです。逆にそういったことを相手の目線に立って伝えることの難しさもあります。7年ほど前に中国の工場でレクチャーした時のことが良い例です。日本人には私の話がよく通じるのに、中国人にはさっぱり通じなかったんです。日本人は水俣病を始め多くの、いわゆる公害に直面してきましたが、彼らにはそれがなかった。だから、環境に負荷をかけると自分たちの生命にも関わってくるということが実感としてわからなくてピンとこなかったんですね。

教える側の失敗でした。相手の状況や目線にフィットする伝え方をしないと伝わるものも伝わらないです。そしてもうひとつ、環境問題は自主的にやらなくてはいけない部分のウェイトが高いわけですが、どこの会社も、法規制だとか、これをやらないと契約に支障をきたすといったことがない限り、直ちには動き出さないことが多いですよね。事業運営は今日明日という時間軸で行われていますから、良いことだとはわかっていても、環境の部分は忙殺されて優先順位がどんどん落ちていってしまいます。

今の仕事に携わるようになってから、自分の意識や生活の中で変わったことはありますか?

人間や歴史、それに地球環境への関心が増しましたね。家庭では生ゴミや落ち葉を利用して自分で肥料を作って、おいしいゴーヤを育てていますよ。

社会に伝えたいメッセージをどうぞ!

まずは物理的なCO2削減だけではなく、人心の酸欠状態をなくそう。そして、日本を環境立国にしていこうじゃないですか。日本は「もったいない」という独自の思想文化を持っていますし、技術的にも、品質管理や公害防止のための環境技術などに独特のものがあります。加えて、日本人の横並びの体質が良い意味で働き、皆でやろうということが機能しやすいです。

ただし、グローバルに考えながらも、足元からこつこつやっていかなくてはいけないのが環境問題です。よく、偉そうに言うだけ言って何にもしない人がいますが、今私たちはいかだに乗って流されている状態です。滝が待ち構えているかもしれないのにいかだの上でああだこうだ議論ばかりしていても仕方がない。議論しながらも、一人一人が、いえ、仮に一人でも、上流に向かって一生懸命漕ぎましょう。

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