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水上浩

vol.2


PROFILE

株式会社東芝 研究開発センター
施設・環境保全部 部長 博士(工学)

現在の会社での経歴

もともとメカの研究者。メカの中でも原子力の安全解析を経て、伝熱関係の研究に携わり、この分野で博士号を取得。98年より現在の環境管理部門に。

家族構成

妻、子ども二人(大学生・中学生)

趣味

模型いじり、アウトドア

好きな国or行ってみたい国

日本をくまなくまわりたい。その他中国、インド、南米、南極。仕事では環境先進国の北欧に行きたい。

影響を受けた人、尊敬する人、目標にする人

父親、諸葛孔明

一番大事にしているもの

家族


担当している主な活動は?

研究開発センターにおける環境マネジメントシステムの運営です。物理的な時間はそれほどかけることはできないんですけど、意識の中では環境コミュニケーションの占める割合が大きいですね。

今の仕事をしていく上での喜びと、逆に難しい点を教えてください。

昔から好きなことしかやってませんからね、いつも楽しいですよ。(笑)ただ、思いが伝わった時の達成感、という意味では、これをやろう、と提案して、賛同を得られるのはやっぱり嬉しいですね。難しいのは、やはりその裏腹でね、うまく伝わらない時。どうにも伝わらない、でも急がなきゃ、って、焦燥感ともどかしさはすごいですね。諸葛孔明が好きとか言いましたけど、自分は戦略には長けてないんでね、体当たりしかないんですよね。環境コミュニケーションは、社内外を問わず非常に難しい。やればやるほど難しいですね。技術は正確に伝えなくてはいけない、でも社会学的な側面もありますから。

学問として体系的にまとめられたものもないですし。うん、学問ができるべきだと思いますよ。エンジニアリングと社会学的なものを融合させた学問が絶対必要ですね。リスクベネフィット論もそうですよね。ある一定のところまでリスクを冒せば、必ずベネフィットはありますけど、そのリスクがどこまで受け入れられるかっていうのは、社会学ですよね。僕はもともと研究者ですから、将来的にはそれを学問としてまとめて大学で教えるってことにも大いに興味がありますね。でも、まだまだ企業でやるべき事がたくさんありますから、軸足は企業においておきたいですけどね。

今の仕事を始めてから体験した、印象的なエピソードがあればお聞かせください。

いろんな思い出がありますけれど、最初に環境の仕事をして、大きな区切りがついたときに親父が死んだってことが、強烈なエピソードですね。環境報告書だって、自分の子どもみたいなものですから、一つ一つ命削って作ってますよ、でも、ひとつだけ挙げるとすると父親の死ですよね。僕が忙しすぎたから、その時に死んだら迷惑がかかると思って絶対に待ってたんですよ。もちろん口には出さないですけどね、で、区切りがついた時に、本当に、待ってましたって感じでね、2日後に死んだんですよね。

親父は小さな町工場の経営者で、くせも多い人間でしたけど、生き方を含めて、全人格を心の底から尊敬しています。僕は彼を越えなくてはいけないですね。いや、公私混同も甚だしいですよね!今日は個人的な話って聞いてるから。(笑)

今一番気になる環境問題は?

企業の社会的責任ですね。もちろん、地球環境問題、特に温暖化とかね、あるわけですけど、そういったことも含めて。企業の存在自体が一面的に見れば悪で、最初から原罪を負ってますよね。ただ、現代社会において、企業を否定することができるのかって、できないと思うんですよ。人類が利便性や快適性を追求することはまったく悪いことではないし、それを捨て去ることはできない。その上で、企業の在り方を考えますよ。企業が参加しないと、絶対答えが出ない、ってところに、在るべき姿で参画するっていうのが、企業の社会的責任ってものだと思うんですね。企業が本当の意味で社会に対して果たさないといけない責任って、よくいう社会貢献とか、あるいは遵法とかありますけど、本当は企業のプロダクツやサービスにおいてだと思うんですね。

自分の売ってるプロダクツに対して、どう責任を果たしていくのか、どこまで責任を持つのか、作りっぱなしでいいのか、もっと真剣に考えようよと。プロダクツで本当の意味での社会全体のサステナビリティをどう実現していくのか、それこそがCSRだと僕は思ってますね。遵法なんて、そんなものは当たり前のことで、CSRの一部にもなんにもならないよ!って思いますよ。まあ、そういうことはね、たぶん一つの企業だけではできないんですよ。共同企業体とか、業界をもっともっと越えた枠組みが必要になるんでしょうね。大きな話になっちゃうんですけど、そんなことをやりたいと思いますね。だから僕は企業の中にいたいんですよ。まず、この企業をどこまで変えられるのか、やってみたい。そんなこと言っても、僕なんかちっぽけで、一人できゃーきゃー言って終わっちゃうだけかもしれないんですけど。

社会が、こうしたらもっと良くなる、というアイディアはありますか?

教育ですね。環境先進国に比べたら、日本は30年くらい遅れてるっていう話ですけど、企業やNGO、NPOの役割を諸外国と比較すると、日本には独自のやり方をつくる必要があると思うんですよ。日本においては、やっぱり企業の参画が必要だと思いますね。今実際に近隣の学校184校に、読者の対象年齢を子どもまで下げた環境報告書を配って、いくつか授業もさせていただいてるんですよ。僕が授業でやっているのは、地球温暖化ってなんなの?といった、一般的な環境知識ではなくて、企業がどういうふうに環境に向き合っているのかが主題なんですよ。

事故が起きた時どう対応するのか、とか、東芝って大きな会社だけど、決して盲目的に信じるものではないんだよ、とかまで赤裸々に語っちゃう。本当に真剣に聞いてくれるんですよね。やりがいありますよ。ま、草の根的な活動ですけどね、少しずつ広がっていけばいいなと思ってます。

担当者になってから、自分の意識や生活の中で変化したことはありますか?

職業病的にいつでも何でも環境に結びつけて考えるようになってます。でも、家の中で一番やっていないのが実は自分だったりしますね。酔っ払ってテレビをつけっぱなしだったりしますし、車には乗りますし、ゴミの分別も間違ってたりしてね。

仕事では偉そうに話していても、いざ私生活では体に染みついた20世紀型の生活習慣はなかなか変わらないものですね。だから子どもの教育ってことになるわけです。

この時代に、日本に生きていることを幸運だと思いますか?

やっぱり根本的に日本が好きですね。骨を埋めるなら日本だと思っています。なんだかんだ言ってもいろいろなチャンスがある国ですし、環境問題への取り組みにしても日本がリードしていくべき分野だと考えていますから、今、日本でこの仕事に携わることができて幸せに感じています。

持続可能な社会は実現可能だと思いますか?

持続可能な社会が実現可能かと問う前に、持続可能な社会とは何かを考える必要があると思いますね。今のところ、「持続可能な社会」を具体的にイメージできている人はいないと思いますね。でも「持続可能な社会」を実現できればそれはきっと理想なんでしょうね。私は、達成できることを信じたいと思います。私ができることはちっぽけなことかもしれませんが、精一杯取り組んでいきたいと考えています。

これからは、どこかの時点で、業界内外での横の連携がキーになってくると思いますね。まだ計画段階ではあるんですが、個人的に水面下で動き始めています。

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